出来ないときはシリアルに牛乳をかけることも出来ない。
このところ料理が出来てうれしい。
理由のひとつは母が料理をするところを見学したことだと思う。
母はわたしと暮らしていた頃、料理でしてはいけないことをいくつか言った。
塩分のとり過ぎはいけない。
砂糖は体によくない。
肉はなるべく食べない方がいい。
野菜は無農薬を、たくさん、様々な種類を、毎日とらなければ病気になる。
お米は水が透き通るまで研ぎ、水平な場所できっちり水加減をしなければならない。
揚げ物は体に悪い。
等々。
母はこれらを危険な伝染病の警告のように、繰返し恐ろしげに語り、わたしはアスペっ子らしくこれらをかなり真に受けて大人になった。
そして体の調子が悪くなると、これらは呪いのように強力に働いた。
野菜は無農薬野菜でなければならない。
もちろん肉は出所確かで育ちがよくなければならない。
つまりスーパーや八百屋で見知らぬ食材を買ってはならない。
料理に塩を使うのはいけないこと、砂糖はもっといけないことだと思う。醤油の色がつくほど醤油を使うのは失敗している証拠。
食材を腐らせてはいけない、出来合いのものを買うのは無駄遣い、電気やガスは節約しなければならない。
こういう禁止事項の中で最も恐ろしいのは「家族に食事を用意しないのはいけない」。
わたしは禁止事項に包囲されながら、料理が作れないと自分には生きる資格がないと感じた。