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くたびれ はてこのことを語る

またか。もう慣れていい気もするけどやなもんだなあ、と思うことがあって、とぼとぼ歩いて帰っていたら、獅子丸みたいな小型犬がちぎれんばかりに尻尾をふって駆け寄ってきて足元にじゃれついた。そばにいた飼い主さんに聞いたら人が大好きなわんこなんだって。久しぶりにわんこをこころゆくまで撫でたら、なんだかぐっと胸が熱くなった。よくがんばったなあ、つらかったのに、最後までやり通したね、えらい、えらい。と、わんこを使節に見えないところの何かにほめてもらった気がした。ああ、頭で考えるよりずっとつらいことだったと気がついて、わんこをなでながらこらえていた気持ちが堰を切るのを感じた。草地を踏んだら思いがけず水があがってきてぬかるみだと気づくように、わんこをなでてほっとしたらじわっと泣きたい気持ちになった。思わず「ちょっとつらいことがあって凹んでいたんですけど、元気でました。ありがとう」といったら、飼い主さんが「あら、そう。がんばってねって。ほら、ね?」とわんこともども励ましてくださった。人心地つくとわんこはそれを見越したように「これでよし」とばかりに飼い主さんのところへ戻った。
地下鉄のホームの柱の影に「気持ちが落ちているときはご注意ください」と書いてあるので二度見したら全文は「リュックは前に持ち車内ではご注意ください」だった。ばっちゃが来てやったから元気だしな、とサツキのもとにやってきたカンタのばあちゃん的な何かが、そばにいて肩をぽんぽん叩いてくれているようだった。落ち込んだりもしたけどわたしはまた元気になります、きっと。がんばった。