昔昔あるところに、それはそれは不器用な若者がおりました
若者の作る笠はとても不格好で、大晦日の市でも毎年売れ残るのでした
ある大晦日の夜、売れ残りの笠を抱えた若者は、辻で雪に埋もれるお地蔵さんに不格好な売れ残りの笠を乗せると祈りました
「お地蔵様、来年の大晦日の市では笠が売れるよう、どうか上手に作れるようにしてください」
するとどうでしょう
翌年の大晦日の市では若者の笠は大いに売れたのです
若者はようやく一つ残しておいた笠をお地蔵様にかぶせると、また同じようにお願いをして帰りました
その翌年も、そのまた翌年も、若者の笠は大晦日の市で大いに売れました
七体並んだお地蔵様の頭には不格好な笠が並んでゆきました
そうして七年目の大晦日、若者はうっかり笠を全て売り払ってしまいました
ただ一体残った笠なしで雪をかぶったお地蔵様を見て、若者は思いました
> そうだ わたしのかさを かぶしてあげよう
> かさがないのだから しかたがない このままかえろう