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文楽/仮名手本忠臣蔵のことを語る

文楽でも歌舞伎でもこういう大きな演目を全段上演することはあまりなくて、普通は特徴的な段、面白い段を抜粋して演じられることが多いけど、今回は今月と7月、11月の公演の3回で全段上演というなかなか画期的な試み。そのうち今月は大序の「鶴が岡兜改めの段」から塩谷判官が切腹し、城明け渡しのところまで。
いつもだと上演されている段の前後にも話があるので、プログラムで解説されているあらすじを読んでもイマイチよくわからなかったりするけれど、今回は最初から全部あるので話はわかりやすい。とは言え、私たちがドラマや映画で見慣れている赤穂浪士の話とは違って時代も人物も変えられているせいで、ちょっと頭が混乱したりも。だって、時代は室町時代の初めということで、足利直義だの高師直だのが出てくるんだものね。
それはともかく、塩谷判官切腹の段は昔から「通さん場」と言われて上演中の客席の出入りが禁止されていたそうで、今回も事前にそういうアナウンスがあったのだけれど、実際に見てみるとすごく納得がいった。切腹の準備をするところからしばらくは、語りも三味線もほとんどなく、沈黙の中で人形の動きだけ。客席も静まり返ってこれまでに経験したことのない雰囲気だった。