@kodakana_ship10
COVID-19のことを語る

酥(蘇)

乳製品の「蘇」、というのは同音の借字で、本字はと書きます。

休校して牛乳余りという流れから一部で話題になったようで、それで思い出したのが岩波新書『木簡が語る日本の古代』東野治之、1983年、で、

isbn:4004202310
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この中に酥を作る実験をしたことが書かれてあり、作り方について以下引用。

 日中の書物にみえる蘇の作り方は、必ずしも一致しないが、整理してみると次の三つになる。
 (一)牛乳を煮つめて十分の一にする(『延喜式』)。
 (二)乳を弱火で煎じ、そのあいだ中、杓子で掻き揚げるようにする。かきまぜてはいけない。しばらくしてこれを鉢に移し、上に張った乳皮をとって作る(『斉民要術』)。
 (三)乳を桶に入れ、半日ばかり搗くようにすると焦沫(黄褐色の沫か)ができる。これをすくいとって煎じ、焦げた皮を除去すると、蘇になる(『本草綱目』)。

これによると、一口に酥といっても、クリームからバターくらいまでの幅がある。著者のゼミに在籍していた学生の提案で、作ってみたことがあり、一と二はクリームやコンデンスミルクのようなもの、三は「糖分が多いものの、バターによく似ている」と。

こうした乳製品は、唐から摂り入れて、律令体制の朝庭が、支配階級の消費のために、諸国に牧場を作らせ頁納させていたもので、酪農の裾野が無い日本には根付かず、文献に記録されたほかは忘れ去られていったのであった。

それはともかく牛乳豆腐っていうの、酪農家につきあいでもあればたまに分けてもらえたりするんだけど、あれも牛乳をたくさん使って作るんだったと思うので、これも連想的に想い出したのであった。美味しいんですよ。