デジタルラジオは日本に普及できるのか?
独自方式が失敗続きなのに、国際標準に合流する準備もしていないのが現状です。
ラジオ放送のデジタル化は、ヨーロッパではノルウェー、イギリスとスウェーデンで1995年に DAB 方式が実用化され、現在はある程度普及が進んでいます。この状況を前提に、中波(AM)の廃止も進んでいます。またアメリカ大陸を除く世界の大半の地域で、DAB、その改良型の DAB+、またはこれを拡張した方式の導入、試験、少なくとも検討が行われているようです。なお北米では IBOC 方式による「HD-Radio」の普及が進んでいるものの、世界的普及は難しそう? な感じです。
上の画像は WorldDAB より、普及状況を示したものです。
日本では1998年頃から具体的な検討が始められたようですが、地上波デジタルテレビと共通の基盤を持つ ISDB-T 方式を採用し、そのままでは実用化には至らず、この系統の技術を利用した NOTTV は2016年に、i-dio は今年3月に終了しました。このようにラジオのデジタル化が全く進まないにも関わらず、中波は送信施設の維持が困難になる可能性があることから廃止が検討され、アナログ FM に移行するのが関の山という状況です。
日本独自方式によるデジタルラジオの失敗は、日本市場でしか売れそうにない商品に投資したいという向きがもはや甚だ少ないことを表しているようです。これに対して、DAB 系の方式は事実上の国際標準になりつつあることから、もし日本に導入した場合に、普及しないうちは受信機がすごく高いということもなさそうです。ソニーやパナソニックも海外向けには DAB 対応ラジオを発売しているのです。
下の画像は Amazon.co.uk で販売されている DAB ラジオの図です。
では、DAB 方式は日本に導入できるのか?
DAB では一般に第三帯域(Band III)と呼ばれる 174〜240MHz の周波数が使われているようです。そこで総務省のウェブサイトで調べると、日本ではこの帯域は公共業務移動体通信や航空管制通信に使われています。特に 170〜205MHz は、公共業務用広帯域移動通信(公共BB)向けとされていて、これは近年整備が進められているものです。
そこで、DAB を標準的な周波数帯で導入するには、これらの通信を整理する必要がありそうです。あるいは DAB を他の周波数帯で導入すると、現在の FM のように「日本だけちょっとずれている」ということに、またしてもなってしまいます。
この点で日本政府のラジオ放送政策は、あまりにも手を拱いているという印象です。独自方式でもう一度失敗している余裕はないでしょう。早く国際標準への合流に舵を切ることを望むばかりです。