あれは六年くらい前だろうか。
姪は三歳からいつも、長い休みには[合宿]と称して私の婚姻地に泊まりに来てた。
私の当時の勤務先は基本は半日だけの個人事務所で、私は子連れ出勤をし、姪は事務所の片隅で本を読んでいい子にしてた。
もう少し大きくなるとひとりで留守番をしていて、お昼に変えると部屋に巣ができていた。
無印のソファークッションに毛布やタオルケットを持ち込み、おやつと本が回りに散らばったあれは、まさに巣だった。
私の休日には一緒にお出掛け。
当時バレエをやっていたので、ねだられて渋谷のChacottによく行っていた。
ある日Chacottを見た後、竹下通りを下っていると、「芸能界に興味はありませんか?」と声をかけられた。
一瞬何を言われたのかわからず「あー、いえ…」と答えにならない返事をしてやり過ごす。
しばらく歩いたあと姪のひとこと。
「ゆきちゃん、さっき自分が言われたと思ったんでしょ」
…そうだよ!
一瞬自分に言われたのかと思ったよ!
すぐ我に返ったわけですが、姪にはしっかりと見抜かれていたのだった。
痛恨のおもひで。