あれは土曜日のことでございました。
夜中にふと目覚めると、厠に呼ばれたのです。
寝しなに麦酒をいただいたことを思い出しました。
大変美味しくいただいたというのに、人間とは実に勝手なものでございまして、こうなると忌々しく思うのでございます。
けれども、それにあらがうほどの勇気も体力もない私は、ため息をつきながら、中に入ったのです。
我が家の厠には小窓がございまして、この時期そこはいつも開け放たれているのでございます。
いえいえ、ご心配には及びません。
ワイヤー入りガラスの向こうにはちゃんと格子がございますので。
座ってほっとしておりますと、窓の外から怪しげな、ざっざっざっという音が聞こえてきたのでございます。
それは寅の刻を半時ばかり過ぎた、暗い窓の外に怪しく響いたのでした。
小窓からそっと外を覗くと…。
近所に住む伯父が、犬をに引かれて散歩にでてゆくところだったのでございます。
三時…
おじさん!
真冬の朝六時に散歩から帰ってくるのは目撃していたが、夏は三時ですか!!
私にはとうていできぬこと。
ため息をつきながら、静かにベッドに戻ったのでございました。