働くことは、人に自信を与える。
自分が必要とされていることを、この世界で生きていてもいいということを、カネという分かりやすいもので理解できるからだ。仕事があるということは、この世界に自分の居場所があるということだ。羊は草を食み、虎は獲物を捕らえ、ヒトはカネを稼いで生きている。
高校時代の自分にメールを送ることができたなら、もっと色々なアルバイトをしておきなさいと伝えたい。十代ならではの生意気さで大人をバカにしていたけれど、ほんとうは大人のことをよく分かっていなかった。
大学時代の自分にメールを送ることができたなら、早いうちから仕事を見つけなさいと伝えたい。ありきたりな「シューカツ」という商品を消費する立場に甘んじるのではなく、自分から興味のある業界に飛び込んでみなさい、働いてみなさいと伝えたい。大学生ならではの頭でっかちで社会を分かったような顔をしていたけれど、私の知っている社会は針の先ほどの広さしかなかった。
誰にだって、やりたくないことの1つぐらいはある。必要とされたくない場所というものがある。そういう場所で働き続けると、ヒトはいつか死ぬ。肉体的には生き長らえても、心は生きていられない。ただ息をして、食べて、排泄するだけの装置に成り下がる。そんなのはイヤだ。
どうせなら、自分の望む場所で生きていきたい。認めてもらいたい人たちから、必要とされたい。そんな仕事なら怖くもなんともない。
そういう生き方を、しあわせと呼ぶのだ。
(2012年10月12日「デマこい!」より転載)