id:dominique1228
勝手に引用のことを語る

村田は精神障害者のリハビリテーションにおいて「価値論」からのアプローチの重要性を指摘し「障害の相互受容と自己価値再編」のプロセスとしてまとめている。障害の受容には挫折体験が欠かせないとされているが、多くのメンバーは作業所に来るまでに何度も挫折体験を繰り返している。しかし、なぜ挫折するのか明らかな答えが得られないまま、疲れ果てて作業所にやって来る人が多い。そうした人の一番の支えは同じ障害をもつ仲間との出会いである。はじめは精神薬を飲んでいることを隠さなくてもいい「行く場所」ができた、という程度で、他のメンバーとのつきあいも浅い。しかし、作業を一緒にすることで集団になじみ、受け入れられて行くにつれ、作業所の外でもつきあえる友達ができるようになる。この過程はまさに「障害の相互受容」にほかならない。同じ障害をもつ仲間のいろいろな生き方を見て「ああこういう生き方もあるんだ」と思えるようになれば、「自己価値の再編」までできたといえよう。しかしここに至るには、年単位の時間がかかることが多い。その間、安定して作業所に居続ける人は少なく、なかには作業所に満足できず通所を中断する人もいる。特に「働くこと」によって得られる地位や立場に「あるべき自己像」を置く人にとっては、作業所は「働く場」と呼べる場所になりづらく、何度も「働く場」を求めて作業所を出て行く。作業所は、就業が現時点では困難であることの見通しを伝えた上でも挑戦したいという人には、もし失敗したら戻ってくることを約束してもらうことが多い。失敗し挫折して戻ってきた時に、集団が自分を受け止めてくれたという経験が「障害の相互受容」にもっとも効果的だからである。作業所にはもちろん通所制限もなく、再通所も断らず、むしろ優先的に受けている所が多い。精神障害者にとって出たり入ったり自由に利用できる社会資源の存在が重要であろう。

共同作業所の実態と役割 -精神障害者の働く意義について- (5) 障害受容の困難性に対して作業所の果たしている役割
「リハビリテーション研究」1992.1 (第70号)

この「障害の相互受容」と「自己価値の再編」、すっごくよくわかる