昨夜夜半、徒歩で移動中のこと、横断歩道の手前の歩道が完璧に凍りついていて、赤信号で歩みを止めるつもりが、靴底とアスファルトの間には期待した摩擦が発生せず、つるりとすべって身体が宙を舞った。空中で意識に余裕を感じた私は、地面に対して水平に浮遊した体躯を2回転半翻し、急所にもっともダメージが少ないであろう部位を下に選んで落下を開始した。ダウンジャケットの生地が地面に触れるのを敏感に感じとると、体を横に振り、下への衝撃を完全に横回転に昇華させてごろごろごろと3メートルほど凍りついたアスファルトを転がった。目を開けると眼前には満天の星空が広がっていた。人生で最高の受け身である。一連の動作を目撃した人がいなかったのが残念でならない。
後半から嘘を織り交ぜるのことを語る