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残業(トナカイ)のことを語る

コインランドリーの前で夜風に吹かれている。平日24時閉店の最寄りのコインランドリーがまだ開いているのは、私が洗濯機の稼働時間を見誤ったためである。前回20分で終わった洗濯物と同等の量の洗濯物を放り込んだつもりが、今回は40分と表示された。一度稼働させたテクノロジーを止める手立てはない。店内で居直ってスマホをポチポチしていると、店主が閉店準備のために奥から現れた。店主は洗濯機の残り時間を見るなり軽くため息をついて、私に声をかける。「外で待ってなよ、外の方が涼しいから」店主に残業を強いてしまったことへの申し訳なさがあり、居心地の悪い空間と化していた店内から脱出する助け舟まで出されたことも相まって、もうほんっとすんません!ほんとすんません!デュフフフと気持ち悪い音を発しながら渡りに舟とばかりに店外へ出て、ガードレールに腰掛けて夜風に吹かれている。私が外に出るや、店主は洗濯機と乾燥機から本日の売上を回収し始めた。単にどこの馬の骨ともしれない客の前で現金に触れたくなかったのかもしれない。そしてこの取り留めもない文章を書き連ねる内に洗濯機の残り時間はもうすぐ終わりを告げようとしているのだが、今現在、店内に店主の姿はない。店主がいないこの隙に洗濯物を乾燥機に放り込んだら、店主はさぞ怒るだろうなぁ、という悪い考えが頭にもたげたが今日のところは勘弁してやろうと思う。武士の情けというものである。