id:discordance
残業(トナカイ)のことを語る

[今起きありまま]

人通りがないではない夜道をラジオを聞きつつ散歩がてら帰る道すがら、道端に気味の悪い彫像を見つけたので写真に収めようとスマートフォンを構えたところ、視界の端の方でベージュのコートを羽織った女性が音もなくスゥーーっと近寄って来た。なんだろうなぁ怖いなぁ怖いなぁと思って恐る恐るイヤホンを外すと、
女性はキッとこちらを見据えて「そこでそんなことしてないで、早く帰ったほうがいいです」と言った。
酔っ払っている。

「そうなんですか?」とまるで他人事のような調子で聞き返すと「はい、早く帰ってください!さぁはやく!」とハエを追い払う手振りをして、しかし何故かバツが悪そうにして女性は一本先の路地の方へ消えていった。通りに取り残された私は、気味の悪い彫像がなんだかとても気味の悪い彫像に思えてきて写真を撮らずにスマートフォンをしまってしまったのでした。

二億歩くらい譲って楽観的に考えれば、地元で飲んでいた女性が地元友達の誰かと間違えて声をかけたら相手が不審者だったというオチかと思わなくもないが、おおかたあの気味の悪い彫像を先祖代々護ってきた家の当代の巫女なんじゃないかと思ってる。お神酒の飲み過ぎである。

上司に怒られるわ若い女性に追い払われるわ、何かと堪える金曜日でした。