某駅の格安理髪店にて、ようやく散髪席に座った二人先の客が理髪師に希望の髪型を伝えるが、髪を切る量について理髪師から殺伐としたレスポンスがあり、ざっくり言えば、ごっそり切るか、またはほとんど切らないか、の二択を客が迫られている。理髪師の語気は強く、客は困り果てて、じゃあお任せします、と決断を放棄し専門家の判断に委ねる。そう、休日の午後に些細な決断を迫られることほど苦しいことはないのだ。しかし理髪師は追求の鉾を収めない。言葉は丁寧語だが、切るのか切らないのかハッキリしろ、という切迫感が伝わってくる。結局客が何をオーダーしたかは聞き取れなかったが、程なくして散髪は終わり、先客は入店時とほとんど変わらない髪型で前を通り過ぎて行った。今一つ先の客が席に案内された。次は私の番だ。鼓動が速く鳴り、スマホを握る手が震える。ここは地獄。地獄の○○ハウス。
残業(トナカイ)のことを語る