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残業(トナカイ)のことを語る

今週も金曜と土曜の境目でキーボードをバリバリ叩いたり終電の絶滅を憂いたりする内に、はたと気が付いた。今日こそはとモニタの中で東奔西走していた私だが、例によって既に終電を逃したと知るや、微かな落胆に隠れるようにして安堵に似た感覚が肋骨の内側でじわりと広がるのだった。その背に跨がれば遥かなる黄金郷エルドラドに誘われるとも言われる幻の珍獣、金曜の終電。その姿を一心に追っていたつもりだが、果たして私こそが終電に追われているのではなかろうか。そう思わされた。午前3時のオフィス街は静まり返っている。空気は冷えているが風はない。いつもの漫画喫茶へと続く下りの坂道で自然と視線が下を向いた。背後から、足元を覆うように巨大な影が広がっている。後ろを振り返ると、レールがゆっくりと軋むような鈍い音が聴こえた。