id:quadratus
勝手に引用のことを語る

「さてと、ところできみ……」
立ちあがって、こちらに向かって再び話しはじめた特別司法警察職員は、予期せぬマロワンの視線に出くわして、驚きのあまり一瞬口をつぐんだ。その視線は、重々しく深く、はるかな高みから発してエナメル製の靴をはいた小男の正体を見定めるような、静かな強さを湛えていた。
ジョルジュ・シムノン『倫敦から来た男』