id:quadratus
勝手に引用のことを語る

「ボーマンは、興味をある一つのものに集中することのできない人間だった。(…)だが彼の決断は正しかった。専攻を選ばないというその事実が、彼を現在の任務につけるユニークな資格となったのだ。フランク・プールもほぼ同じで ― ときには自分のことを宇宙生物学のしろうと研究科と軽蔑的に呼ぶこともあるが ― ボーマンの助手には理想的な人選だった。この2人が一致協力し、さらに、必要な場合ハルの厖大な情報の宝庫が加われば、旅のあいだに持ちあがるどんな問題も必ず解決できるはずだった ― 少なくとも、常に心を油断なくとぎすませておき、過去に学んだ知識を絶えず記憶に新しく刻みつけているかぎりは。」

「プールの日課も、ボーマン自身のそれとそっくり同じ。二つのスケジュールはみごとに適合し、摩擦が起きる心配はない。二人とも忙しいし、理性的にも性格的にも喧嘩のできない人間なのだ。時の経過はディジタル時計の移り変わる数字に表われるだけだった。
 そしてディスカバリー号の乗員の最大の願いといえば、これから先何週間も何ヶ月も、この平和な単調さが破られないことだった。」

アーサー・C・クラーク『2001年宇宙の旅』