id:quadratus
勝手に引用のことを語る

「居間兼書斎は長方形の広い部屋で、三方の壁面をおびただしい数の書物が埋めている。革表紙の匂いを立てる書物がぎっしり詰まった棚が段をなして重なり、天井に達しているのだが、第四の壁だけは、普通の居間と同様に、大きな暖炉が切ってあり、マントルピースは頑丈な樫材、火格子の鉄枠が光輝を放ち、暖炉の上には、いまはこの家の名物になったサーベルが二本、ぶっちがいに吊るしてある。これは若き日のリチャード・クイーンがドイツに留学中、ニュルンベルクのフェンシングの教師から贈られたものなのだ。広い室内のあちこちで、いくつかの室内灯がまたたき、安楽椅子、肘かけ椅子、低いソファ、足台、明るい色の革クッションを照らし出し、ひと言でいえば、高雅な趣味を持つふたりの知識人が快適な生活を送るべく作り上げた、最高に居心地のよい部屋なのだ」
エラリイ・クイーン『ローマ帽子の秘密』

ベイカー街221Bは別格として、西八十七丁目も捨てがたいのだ。