id:say-01
化けの皮ガス爆発のことを語る

昼寝から覚めたので「凶悪」のネタバレ感想書きます。

藤井記者が須藤死刑囚からの断片的な情報で書いた記事は上司に「藤井の憶測」と跳ね除けられる。あのあたりまで取材しながら推理して事件を追う藤井が描かれているが、「先生」こと木村の過去に到達するかのところでシームレスに事件当時に舞台が移る。
最終的に藤井は膨大なファイルを上司に提出するが、そのときに「裏は取れています」と言う。なるほど、裏が取れた情報が全て藤井にとって「目で見てきたような」真実だということだ。面白い仕掛けだ。
実話を元にした映画なので、どのように取材し裏を取ったのか、というところにフォーカスしても面白い推理サスペンスになったと思う。でもこの映画はそうじゃない。藤井が事件に没頭し、被害者に共鳴し、恐ろしい憎悪の念に取り憑かれていく物語だった。

須藤も「先生」もニコニコしながら人殺しする凶悪な人たちなんだが、私には怖さが湧いてこなかった。実際にあのような人に会ったことがなく想像が追いつかないからなのか。いや、もし目をつけられたら逃げようがなく覚悟するだろうみたいな、投げやりな感情の方が近いか。

やっぱり1番怖かったのは、「先生」が指摘したとおり、「先生」を1番殺したがっている人物ーー藤井だ。
他人のために腹を立てることは誰でもあるし、酷いやつにクタバレと思うこともあるし口に出すこともあるだろうけど、藤井の憎悪はその一歩ぽっち先に行ってしまっているような不気味さだ。
たった一歩ぽっちだ。
隣人が、自分が、そっちへ行くのにたった一歩ぽっち。そんな恐怖を感じた。