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頭にこびりつくコピペのことを語る

森(達也) 入社したその週に、いきなり海外ロケです。他愛のない情報番組で、タレントがいて、バン コクや香港に行って、その飲み食いを撮るといった番組です。それまで、ずっと貧乏でしたか ら、海外は初めてでした。撮影のノウハウや基礎知識もないままで、初めてADについたんで す。海老名香葉子さんと、娘さんのみどりさんがレポーターでした。その現場で、世界で最も 凶悪なエリアと呼ばれた九龍城が当時はまだあって、香葉子さんが中に入ってしまったんです。

森巣(博) カメラもついて入ったわけ?

森 そのつもりは全然なかったんです。香葉子さんと九龍城の遠景を撮るだけで終わるつもり が、急に香葉子さんが中に入ってしまって、コーディネーターは命の保証はできませんと青さ めている。香港マフィアや大陸から逃げてきた犯罪者たちの巣窟で、ほとんどのガイドブック に「絶対中に入ってはいけません」と書いてあった時代です。とにかく救出に行くしかないと いうことで、撮影機材を抱えて中へ入りました。  ところが、いざ九龍城に入ってみると、ごく普通の居住空間です。彼女は、どこかの家でニ コニコしながらお茶にお呼ばれしていて、結局、みんなでお茶を飲んだ。突発的なハプニング ですが、でもドキュメンタリーの現場性によって引き起こされた事態でもあるわけで、つくづ く面白い仕事だなって思ったんです。同時にそのとき、多数派によって危険だとか怖いとか喧 伝されている場所や人が、意外とそうでもないことを肌身で知った。この体験も大きいです。