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勝手に引用のことを語る

金閣寺に放火した犯人が「美に対する嫉妬」と言ったり、「見物にくる人間への反感」と言ったという新聞記事の報道は、犯人がそのとき、そう言ったという事実を伝えているかも知れないが、犯人の本当の心がそれにつくされていると考えるのは速断にすぎるであろう。犯人というものが本当の心を言わないという事ではなく、人間というものが、真実を語ろうと努力している時ですらも、表現が思うようにできなくて、頭の中にあることと相当ヒラキがあるような、自分にとっても甚だ空疎でヘタな説明しかできなかったりしがちなものである。

坂口安吾
我が人生観(五)国宝焼亡結構論