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メンターのことを語る

メンター(先達)のパラドックス
<<武術でも芸術でも、何かを習おうとするとき、仮にそこに何人かのメンター候補者がいたとします。誰に就いて学ぶべきか、僕たちはその中から選ばなければならない。..(略)..よく知らない分野のことについて、誰が技芸にすぐれており、誰が自分をあやまらず目的地に連れて行ってくれるのかを決定しなくてはならない。>>
<<でも、初心者はその定義からして、「目的地」がどこだかよくわかっていない。自分がどこに行くのか知らない人間が自分を目的地に連れて行ってくれる人間が誰であるかを言い当てなくてはいけない。これを「不条理」と申し上げたのです。>>
<<学びはこの瞬間に起動します。なぜなら、自分自身の価値判断を「かっこに入れる」ということが実は学びの本質だからです。>>
<< 「師であることの条件」は「師を持っている」ことです。人の師たることのできる唯一の条件はその人もまた誰かの弟子であるということです。それだけで十分なんです。弟子として師に仕え、自分の能力を無限に超える存在とつながっているという感覚を持ったことがある。ある無限に続く長い流れの中の、自分は一つの環である。長い鎖の中のただ一つの環にすぎないのだけれど、自分がいなければ、その鎖はとぎれてしまうという自覚と強烈な使命感を抱いたことがある。そういう感覚を持っていることが師の唯一の条件だ、と。>>
(内田樹『下流志向』)