「ストレスを感じさせない人」が評価につながる——神戸女学院大学教授・内田樹氏インタビュー
(日経トレンディネット2008年10月03日より)
(...)もとはといえば、自分の無思慮が生み出したストレスですから、抜本的には「もうすこし賢くなる」ということしか解決法はないです(笑)。
(...)必死で働いている時には賢くなる余裕がないので、とにかく仕事をしない時間をつくる。原則として夜6時以降は仕事をしないと決めています。どんなにスケジュールが詰まっていても夜に書き物はしません。合気道や杖道や能楽の稽古がある時はお稽古をして、お風呂に入って、お酒を飲んで、映画を見て、マンガを読んで、寝ます。
(...)今は「自分がしたいことをするのが仕事」という労働観が多数を占めていますよね。でも僕は本来、人から頼まれたことをするのが仕事の本義ではないかなと思うんです。
(...)職場でやる仕事のたいていは集団でやる仕事です。そこでは「コラボレーションする能力」というのが一番大事で、自分がその会社で何ができるかというのはその次の話。コラボレーション能力が低い人間は、一生懸命知識をつけたり資格を取ったりしているにも関わらず、「自分は評価されない」といって怒っているのが大半です。
(...)家庭も職場も、コミュニケーション感度のいい人だけで構成されていれば、そこにストレスは発生しないはずなんです。そのためには、先方からも「コミュニケーション感度がいいから、この人と仕事をしているとストレスを感じない人」という評価をあらかじめ得ておくことが必要です。こちらが「ぜひ一緒に」とお願いしても、向こうから「キミといるとストレス感じるから嫌だ」と思われたらそれっきりですからね。
(...)人に「教わる能力」をもって、言われたことをスポンジのように吸収していけばいい。どうやって自分を真っ白な状態にできるか、予断を持たず、価値判断ぬきで相手と向き合い、「この人は自分に何を求めていて、何がしたいのか」を察知する能力が一番大事なんですよ。
(...)自分の好き嫌いとかをとりあえず「括弧」にいれて、相手の話を聞いてみる。自分と立場や意見が違う人が現れた時に、このやりとりをする能力さえあれば、たいていのことはうまくいきますね。
内田樹のことを語る