アカシアの雨にうたれてこのまま死んでしまいたい……
空の近く、森の高い梢にアカシアの白い花の靄がたちこめる。
カスミソウのように純白でなく、フジのように艶やかでもなく、
濁り湿った乳色の粒が色濃くなってきた木々の葉の緑を滲ませる。
アカシアが咲く梢を眺めては、中空高くふわりと舞い上がり、
その白い靄に吸い込まれるさまを夢想し、憬れる。
甘く芳しい蜜を湛えたアカシアの雨に満たされて、溺れ死ぬ。
白い靄に群れ集うチョウやハチ、小鳥たちがそうしてきたように
その香に噎せ返り、そして眠る。
連綿と続く営みを何年も何十年も見つめてきたアカシアに看取られたなら、
無限と続く短い命の鎖に入れるだろうか。ひとつの環になれるだろうか。
ミルクティー色の水溜まりのごとく足下にくすんだ花弁を敷き詰めた……
……アカシアの雨にうたれてこのまま死んでしまいたい。
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