昼間の仕事での不愉快な出来事について、不満をこねくり回しながら下書き線の上に一目一目愚痴を縫いつける。
一通り不満も刺繍もひと段落したので顔を上げて一息つくと
手元の布の上から何やら小さいしかし大勢の声が一斉に聞こえる。
自分が縫い付けた愚痴が刺繍の目から漏れ出してしまったらしい。ふふっとつい笑ってしまったら縫い目がクモの子を散らすように、さあっとあちこちに逃げていってしまった。
手元に無地の布だけが残ったのを見て爽やかな気分になった。愚痴も一緒に連れていってくれたのだろうか。
明日も頑張れそうだ。
超短編のことを語る