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勝手に引用のことを語る

勝利も敗北も、同じ太陽から発するそれぞれ異なった光線として、まじりあいもつれあっていた。わたしが馬蹄にかけるあのダキアの歩兵、また後に、乗馬が棒立ちになって互いの胸前を咬みあうような白兵戦のさなかに落馬したあのサルマティア人の騎兵、彼らと自分を同一視したからこそいっそうやすやすとわたしは彼らを撃ち倒したのであった。

マルグリット・ユルスナール著、多田智満子訳『ハドリアヌス帝の回想』(ユルスナール・セレクション1)白水社、2001年、p63。