ツングース型のエヴェンの場合、鞍は馬のものとかなり違う。木の骨組みを毛皮の袋で覆い、トナカイの毛を一杯に詰めたもので、自転車やバイクのサドルのようにも見える。これをトナカイの肩の上あたりに装着し、やはり右手に杖を持って、サヤン型とは逆にトナカイの右側から乗る。鞍が幅広いので、またがるというより、トナカイの肩の前に脚を出して座る感じだ。鐙がないため、両脚がぶらぶらしていて何だか不安である。座る位置が前寄りなので、落トナカイする場合は横にずり落ちるのではなく、前につんのめる感じになる。
中田篤「トナカイ牧畜の歴史的展開と家畜化の起源」高倉浩樹編著『極寒のシベリアに生きる トナカイと氷と先住民』新泉社、2012年、p59。
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