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いま読んでる本のことを語る

保立道久『歴史のなかの大地動乱 奈良・平安の地震と天皇』岩波新書2012

3.11の記憶生々しい年に上梓された、地震・津波・温暖化による飢饉と疫病にたいする歴史学者からの殴り込み。今までの研究テーマを放り捨てて、自然科学研究者に混じり9世紀の陸奥巨大地震の研究に邁進した筆者が描く、地獄のように天変地異続きの奈良平安。十二国記よろしく、このころの天皇は天変地異の原因は自分の不徳のせいだと考え、ある天皇は実際に譲位までし、ある天皇は自分が怨霊になることを恐れて自分の遺骨を砕いて山中に蒔き捨てろと言い残す。

この方の本、個人的には高校のときに『中世の愛と従属』という本を読んで大変エキサイティングだった記憶があるのですが、この本も凄い。桓武帝というサイコパスな毒親、その犠牲となった平城帝という図式も新鮮。

大学の指導教員からは「政治史なんてほとんど妄想」という真理を教えてもらって、それはそれで自分のなかでは重要なんですが、あのころの皇統の流れにそんなドラマがあったという視点もそれはそれでエキサイティング。