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最近読んだ本のことを語る

黒岩重吾の『中大兄皇子伝』上下巻

この作品での中大兄の性格はよくわかるのだが、彼が恋々とする鎌足のそれは、中大兄が言を尽くすほどにわからなくなってくる。中大兄は鎌足について何度も「油断がならない」「用意周到だ」と言い、様々な政変の裏で鎌足が暗躍しているのではと疑う。鎌足の人となりの「わからなさ」は、実は中大兄も最期まで操られていたのでは、と思えてくるつかみどころのなさなのである。特に下巻の最終章、倒してきた政敵たち、最愛の妻も迎えに来る中大兄の死出の旅路に、鎌足が現れてこないことで、わたしの疑いは最高潮に達した。鎌足…、おそろしい子…!