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いま読んでる本のことを語る

『パパは楽しい躁うつ病』北 杜夫、斎藤 由香、新潮文庫

電車のなかで読んじゃいけない本だった! 笑えるけど、躁うつ病持ちの父を持つ長女としては、いろいろ身につまされる。

ここから引用>>
北「じゃあ、斎藤さんはお父さんの職業を聞いてらっしゃい」って言われて、その日の夕食で、「パパの職業ってなあに?」って聞いたね。
由香 パパは「作家」って言えばいいのにそのとき、「著述業」って言ったの。「チョジュツギョウ」というのが、わからなくて。「そんな、チョジュツギョウなんて変な職業やだ!」って泣いて、食べたものを吐いて、ママが「由香、食事中に吐くのやめなさい、泣くのやめなさい!」って怒って、また吐いて。
(略)
北 でも由香は、パパがそのとき本当に何をやっているか知らなかったよね。
由香 知らなかったです。夜中に二階の書斎で原稿を書いていたけれど、朝、学校へ行くときは寝てるし、昼帰ってきても寝てるし、夕方パジャマだったりするから、ちっちゃいときは「パパが泥棒だったらどうしよう」って思ってたし、そもそも作家なんて職業を知らなかった。
北 あまりに由香が泣くから、ママが「泥棒よりはいいんじゃない」って言ったら、由香が「泥棒の方がかっこいいよ!」って。
<<引用終わり

ほかにも「あなたは私が倒れて死ぬかもしれないとかいうのを、かけ寄って助けることもなく、救急隊員にコカ・コーラとキリンレモンどちらがいいですかとか言って、あなたは自分勝手なのよ」と怒るママとか、「スティーブ・マックイーン出演の映画を観ていたら、マックイーンが上半身裸で馬に乗っていて美女と出会ってベッドインした。パパも上半身裸で馬に乗ったら、美女と出会えるから馬に乗る」とか、もうあちこち抱腹絶倒です。

あと、躁状態の大人は子どもにはパワーが釣り合って面白い相手、という知見も面白かった。父に顔も字も思考法も似ているわたしが、友人の幼児と遊ぶとその子が興奮してその夜寝ない、と以前に言われたことがあるんだけど、わたしも躁転しやすいってことなんだろうなあ。