『フラニーとズーイ』サリンジャー、村上春樹訳 25頁にして、フラニーがいけすかないと思う世界の構成人物が「やれやれ」というので困ってしまった。なにせ、村上春樹の「やれやれ」は、色が付きすぎている! それはともあれ、作者はトルストイ的なキリストを、意識してかどうかはわからないけれど、復活させることに成功している。それが村上訳ではよりはっきりとわかる。自分は他人とは違う、と思いたい若い人には、この一冊は衝撃にも救いにもなるだろう。