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相棒のことを語る

けっこうな勢いで脚本のクオリティが下がっていて、ほとんど見なくなっていたドラマ『相棒』ですが、今期の最終回は惨憺たる有様でした。熱心な相棒ファンには「地雷」と言われる脚本家担当回とも聞きますが、まさに、「なんでこうなった」状態。

ネタバレになりますが、タイトルのもとネタどおり「ダークナイト」の正体が主人公=杉下右京だったほうがまだ納得感のある脚本になったんじゃないでしょうか。というわけで妄想開始。思いついたシーンだけ書いてるので、間は想像力とか妄想力で補ってください。

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カイト「あれ、右京さん手、どうしたんすか?」
右京「薔薇の手入れで怪我をしてしまいました」
角田「杉下警部~、なんですか薔薇って、そうとう育てるの気を使うらしいじゃない」
右京「自宅で紅茶を楽しむ際に、やはり紅茶以外の香りがあったほうが引き立つと思いましてね。それに、薔薇の育成はぼくの細かいところが気になる性格に合ってましてね」
角田(ついていけない、という風情)
右京「あ、カイトくん、綺麗に咲いたら悦子さんにも差し上げますよ。持っていってあげてください」
カイト「いいですよぉ~、だって薔薇ってトゲがあるんでしょ?」
右京「ああ、悦子さんには薔薇はやめておいたほうがよさそうですね」
カイト「?! 右京さん、悦子のびょ」

右京の携帯が鳴る。

右京「ああ、米沢さん。はい、やはり。ありがとうございます」
右京「カイトくん、幸子さんに任せていないで、できるだけこまめに悦子さんのところに行ってあげてください。お花くらい持って」
カイト「あ、幸子さんから聞いたのか。そりゃそうですよね。あ、いや、行きますよ、行ってますよ?」
右京「それは結構。キミも父親になるのですから」
カイト「ああ、はいはい。もう、親父と同じこと言わないでくださいよ」

イタミン「だから、裏金の口座もう一個どこなんだよ!」
ヤクザ「ねえよ、んなもん」
芹沢「あのねえ、あれだけのヤクの取引してて、口座にこれだけって、ありえないでしょ?」
イタミン「ナメた真似してんじゃねえぞゴルァ!」
ヤクザ「だからね、ネット口座の履歴、見てくださいよ。なんかわけわからんうちに残高が減ってんだよ。ありえねえって言いたいのはこっちよ」
芹沢「先輩、これIT部門に持ってったほうが……」
イタミン「バカいえ、裏口座に自動送金に決まってんだろ!」
米沢「失礼しますぅ~。伊丹刑事、ちょっと……」

イタミン「なに? それマジか?」
米沢「はい、どうも例の都議会議員のロンダリングに使われているようで」
イタミン「やっぱりな、あいつ、トボけやがって」
米沢「あ、ちょ、ちょっと待ってください、まだあともう一つ、間にある口座がわからないんで、この件はまだオフレコで」
イタミン「ッチ」(舌打ちしながら取調室の前を通り過ぎていく)
芹沢「あれっ? ちょ、先輩?」

証拠不十分で不起訴になったヤクザと都議会議員が襲われる。

右京「おはようございます」
カイト「あ、おはようございます。あれ? 今度は左手ですか?」
右京「ええ、毎晩、花の里というのも、と思いまして、ちょっと料理をしようと挑戦したのですがね、どうも包丁捌きがうまくなくて」
カイト「どうしたんですか最近?」
右京「カイトくん、仕事だけの人生はむなしいですよ。とくにこの年齢になると」
カイト「ちょっw ほんとにどうしたんですか」
角田「おい、例のヤクザ、工事現場でクレーンに一晩吊るされてたんだってな!」
右京「おやおや、空からの人間の贈り物はコウノトリからのものくらいにしておいてほしいものですね」
カイト「あ、右京さん、悦子がハーブティー喜んでました。ありがとうございます」
右京「そうですか、それはよかった。どうですか、悦子さんの様子は」
カイト「セカンドオピニオンのために、二度目の検査結果待ちです」
右京「そうですか……。結果が決まって方針が定まるまでが辛かったりするものです。しっかりお見舞いに通ってあげてください」
カイト「そうですね……」

イタミン「口座が消えた?」
芹沢「はい、鑑識の話では、議員とヤクザの口座の間にあったネット口座が跡形もなく消えたそうで」
イタミン「議員はじゃあ、口封じに殺されたわけじゃないってことか……」
芹沢「少なくともヤクザのほうにはアリバイがありありですね。ずっとクレーンに吊るされてたんすから」
イタミン「そのアリバイ、なんだかわかりやすすぎないか?」
芹沢「えっ? でも死亡推定時刻や目撃証言からしたら、そうなりますよね?」
イタミン「なんっか見逃してる気がしねえか?」
芹沢「そう、言われてもぉ~」

右京「なんらかの見せしめ、とは考えられませんか?」
イタミン「見せしめ? 誰にですかぁ?」
カイト「あるいは、自己顕示欲、とか」
芹沢・米沢「えっ?」
カイト「なにハモってるんすかw いや、悪いことばっかしてるとこうなるよっていう」
右京「ないとは言えないかもしれませんね」

病院の屋上に犯人を追い詰めるカイト。
カイト「……出て来い。武器を捨てて」
右京「仕方ありませんね」
カイト「杉下、警部ッ?!」
右京「キミはうすうす感づいていると思っていました。悦子さんはお気の毒でしたが、まさかちょうどよい時期に入院されるとは」
カイト「まさか、右京さん、悦子になにか?!」
右京「いえいえ、それは偶然です。白血球の数値を変えるようなこと、ぼくはできません」
カイト「両手を挙げて、そのままこちらへ」

ごくゆっくりと屋上の端のほうにあとずさりで歩き出す右京。

カイト「杉下警部、なぜ、なぜなんです。あれだけ、法の下の正義を追究すると言っていたのに」
右京「そう、ずっとそのつもりでしたよ? 小野田官房長が、亡くなるまでは」
カイト「ひとのせいにしないでくださいッ」
右京「そう熱くならないで、カイトくん」
カイト「その呼び方はやめろぉお!」
右京「おやおや、困りましたね、ではなんと呼べば」
カイト「……」
右京「キミもわかっているでしょう、法の下に曝け出せる正義だけでは、不十分だと。キミのお父様の手がけている組織改革も、不正義の面もあるかもしれない、でも、最終的には」
カイト「欺瞞だ。それは、警察が、俺たちが、いちばん手を出しちゃいけないところだって……。右京さん、それは貴方がいちばん嫌うものだと、俺は思って」
右京「このまま、お話を続けてもいいのですがね、申し訳ないけれど、そろそろ行かなければ」
カイト「行くって、どこへ……。まさか」

カイトの背後から音もなくドローンが近づき、オモリつきの網を落とす。

カイト「!! 右京さん、なにを!」
右京「お先に、失礼しますよ」

隣のビルから飛び立ったヘリから垂らされたなわばしごに、明智小五郎か怪人二十面相よろしく飛びつき、去っていく右京。一瞬、映る操縦士のシルエットは米沢似。

カイト、網の中でもがきながらも電話をかける。
「伊丹さん、花の里に行ってください。いいから!」

伊丹と芹沢が花の里に着くと、もぬけの空。

イタミン「くそっ、なんなんだ!」
芹沢「杉下警部、最初からそのつもりで、月本幸子をスカウトしてたのか……」
イタミン「塀の中で熟成された人脈ってやつは、侮れないからな……」

甲斐峯秋「杉下右京……。よくもまあ……。警察が表沙汰にできない事案ばかりに手をつけて去っていきやがって……」

次長執務室の外にまで聞こえるデスクを殴る音。

一年半後、空港でリゾートウェディングに出かけようとしているカイト、悦子、ベビー、甲斐峯秋ら。

悦子「あれ? 放送で亨、カウンターに呼ばれてない?」
カイト「あれ? ほんとだ、ちょっと行ってくるわ」
甲斐峯秋「しかしあれだな、白血病じゃなくてよかったよほんとに」(言いつつベビーに相好くずしている)
悦子「貧血のひどいのだったって言ったら、亨ったら『ほうれん草食えよ!』って怒るんですよ~」
甲斐峯秋「ありゃ~、ママにのろけられちゃいまちたね~。再生不良性貧血だって! 不良の亨を再生したら、ママが貧血になっちゃいまちたね~」
悦子「もう、お義父さんったら」

グランドホステス「こちらを甲斐亨さま宛てにお預かりしています」
カイト「あ、ありがとうございます。……なんだろう?」

デパートの包み紙を開けると「お祝い 杉下右京」の墨痕も鮮やかな祝儀袋。

カイト「ちょっ……! す、すみません、これ、いつ、どんな人が持ってきました?」
グランドホステス「え? あの、和服の女性から言付かったのですが……」
カイト「……幸子さん?」(空港内を見回す)
グランドホステス「お客様?」
カイト「あ、いえ、すみません、なんでもないんです」

なおも空港内を見回すカイトからは視覚になるところから見ている右京。

幸子「いいんですか? あんな、目立つ真似しちゃって」
右京「二年も一緒にいた相棒に、結婚と出産のお祝いもせずにいるというのも、気持ちが悪いもんです」
幸子「そうかもしれませんけど!」
右京「では、われわれもそろそろ行きましょうか」
幸子「はい!」