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バレエのことを語る

今日の東京バレエ団のブルメイステル版『白鳥の湖』は、一にも二にも、演奏が酷かった。同じフレーズを5回繰り返すうちの3回目で外すとか、信じられないようなミスがざっくざく。ファゴット(しょっぱなの情景など)、ホルン(あちこちでユニゾンすべきところでできていない)、トランペット(宮廷でのお客様おなりの呼び出しで外すなど)が特に目立つ。まるでゴミ箱に入れるために手で紙を握りつぶしている音を聞くかのような、オケ全体がまったく調和していない部分もあちこち。

あれではせっかく舞台美術も衣装も学園祭チックなものから抜け出して、シックな装いになってのダンサーがかわいそう(今回、衣装はブルメイステル版を初演したモスクワ音楽劇場から借りたものもあるそう。どおりで)。

ダンス自体は、去年ロパートキナ様の至高としか言いようがないオデットを見てしまったせいもあり、白鳥は「オデット役を踊っている人」にしか見えなかったのは残念。むしろ群舞の相変わらずの揃いっぷりに、そちらの白鳥っぽさのほうが目立っていたように思う。

ただ、黒鳥はロットバルトが眷属を引き連れてやってきて、気難しげな母后をも物量作戦で篭絡してしまう演出のおかげもあり、ロパートキナ様の静かにいろいろな怒りを燃やしているオディールより楽しめました。とくにオディールと入れ代わり立ち代りして王子を翻弄するスペインの女は素晴らしい。今日は東バでもわたしの好きな奈良春夏さんでした。

そのあとのナポリの女の沖香菜子さんは、衣装がナポリというより、崑崙山脈から来ました、みたいな感じで、バックダンサーはこれまたタイから来ましたみたいな感じでエキゾチック。

そして宮廷シーンになると道化が一人から五人に増量するんですが、その衣装の色がおそ松さんを思わせて、偶然なの? そうなの? と面白い。

そして最後にロットバルトがしつこく王子にオディールへの愛を誓わせたあと、あんなにたくさんいた各国の踊りの名手もろともロットバルトとオディールが消えうせ、一気に宮廷ががらんとする演出は素晴らしかったです。

ただ、最後にオデットが王子を救おうと湖に飛び込むシーンは……。赤い煙と火花が炸裂するんですが、位置的にオデットのロットバルトへの最後っ屁みたいに見えてしまい……。あれはロットバルトの後ろで炸裂してロットバルトが倒れこむ構図のほうがよかったのでは。

なのでほんと、演奏さえまとも、あるいはちゃんとした演奏のテープだったなら、と残念。