恵比寿ガーデンシネマでマシュー・ボーンの『シンデレラ』。映画ならエンドロールになるところで思わずというか、思いがけず落涙。舞台は1940年の空襲下のロンドン。そこでは田舎に疎開もできない庶民はみんな、男女関係なく「灰かぶり」だったんだよ、というマシュー・ボーンの祖父母世代への思いを受け取ったと感じたからかもしれない。とにかくみんな灰色か黒白、カーキ色メインで、シンデレラの白と銀の「舞踏会」ドレス以外はくすんで煤けているのです。
あ、あと邪悪なのは継母だけで、姉さんたちはそれに引き摺られてただけで、芯から意地悪じゃないのもよかった。ほかにも家の中で存在感のないお父さんのやるせなさとか、ゲイなのを母に押さえつけられてる兄弟の行く末とか、主役だけにフォーカスが当たっているわけではない丁寧な人物造形はさすがマシュー・ボーン。天使は『ベルリン 天使の詩』からの翻案+仙女のキラキラ感という感じ。
そんな翻案っぷり、演出・振り付けの無駄のなさは、オーブシアターに見に行かなかったのをちょっと後悔。ただ、わたしにとってオーブシアターはあまり見やすい劇場ではないので……。Bunka muraだったら行ったんだけどなあ。
バレエのことを語る