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ホリィ(新人)のことを語る

一章立てて書かれている「信長と宗教」は特に一向宗や延暦寺への姿勢など『宗教で読む戦国時代』とほぼ同様の主旨でした。
この本全体がそうですが、信長の天下人として調和を重んじる姿勢を強調されていて、安土宗論にも繋がる法華宗への嫌悪も、他宗への攻撃的な態度を問題としたものと説明されています。
よく言われるキリスト教への好意的な姿勢も、日本側の史料にはほとんど見られず、イエズス会が宣教師からの報告書を都合の良いように改竄した形跡も見られるとのことで、殊更キリスト教を特別に扱ったと考えるのは誤りのようです。

通説的な「信長の自己神格化」についても触れて欲しかったのですが、全く言及がなかったのは考慮するまでもないということでしょうか。
Googleブックスの検索結果を見ると、谷口克広氏は『信長の政略』で否定的な意見を述べていて、信長の宗教に対する姿勢についても割と神田氏に近い見方のようです。

今の感想としては、フロイス『日本史』の記述によって作られたイメージや、今では完全に否定されているといっていい「無神論者」とする見方に引きずられて、信長得意の派手な自己演出が全て「神格化」として語られているだけなのかな、というところです。