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ホリィ(新人)のことを語る

『当代記』や『北条五代記』を例に、江戸時代初期には三好長慶が畿内の統治者として評価されていたことは長慶本でも書かれてましたが、今回は信長の評価の変遷との対比が強調されてました。三好氏のことを知らない方にはこれがすこぶる有効なんでしょうね。

僕も谷口克広『信長と将軍義昭』を読んで一番疑問に感じた、義昭が京都を追放されただけで「室町幕府滅亡」とされている不思議についても触れられてました。
船岡山の建勲神社に代表されるような、明治政府が勤皇・軍事的カリスマの象徴として家康に代わって信長を積極的に評価したことが、そのまま現代の歴史教育にも引き継がれているという話です。

三好義継による将軍義輝の殺害も、一万三千もの軍勢を京都に入れて公家と一杯やった翌日に、高名な儒者である清原枝賢を従軍させて白昼堂々と討ち入ったとのことで、本能寺の変のような奇襲とは状況が全く異なっていたとのこと。
それにも関わらず「将軍暗殺」とされ、松永久秀の悪評の一つとして評価されるに至ったのは岡山藩の儒学者・湯浅常山が書いた『常山紀談』の影響が大きかったようです。

逸話集なので三国志に対する『世説新語』みたいなもんですが、面白い話が多いため長く歴史書として扱われてきたわけです。(僕が学生の頃も『歴史読本』の特集などではふんだんに引用されてましたね…。)