物集高量『英雄の奇蹟的行動』(大正11年)には、三好方が本圀寺に将軍義昭を攻めて敗退した際の信長の行動について、こんな風に書かれてます。なかなか素敵な文章ですがちょっと笑ってしまいます。
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信長之を聞くや否や、直ちに軍を催し、紛々たる飛雪を冒しつつ急行して到れば、凶徒既にその勢ひに慴れ、春雪の融くるが如く何処ともなく消え失せぬ。信長乃ち上洛の序でを以て、予て宿望たりし禁裏の修理及び将軍第の造営をなせり。
斯くて信長は、一天萬乗の天子に対し奉りても、若しくは将軍に対しても、既に一端の忠勤を尽くしたれば、従来の威名の上に、尚ほ一段の美名を加へぬ。
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http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/965768/92
ただしこの本、信長自身の人物評価という点では「度量偏狭、包容力に乏しく且つ人材を統御し能はざる一大缺點」と、かなり手厳しいことも書かれています。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/965768/176
天野先生は講演で、江戸時代の信長の評価は人使いという点で低かったと仰ってましたが、その頃の編纂史料を読んだ人からは同様の見方もされたということでしょうか。
この『英雄の奇蹟的行動』は歴史家ではなく作家による一般向け書籍だと思うんですが、かなり詳しく書かれていて興味深いです。頑張ってテキスト化したくなるくらい。