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ホリィ(新人)のことを語る

待望のこれが来たので、育児&通勤の合間に少しずつ読んでます。

いまのところ、三好家の「下剋上」とその象徴として松永久秀を取り上げ、時系列に沿って解説されている感じで、これまで天野先生が書かれてきた物のまとめとして、一般にも広くおすすめできる内容だと思います。
ただ個人的には、永禄元年末の将軍義輝との和睦以後の動向について、将軍と三好家の対立関係を強調し過ぎている印象です。
特に、武田晴信に旧領信濃を追われて京都の分家を頼っていた小笠原長時父子の復帰のため、将軍義輝から長尾景虎に協力を求めた件を、義輝の協力者である景虎への牽制と説明されていたのが…。
小笠原貞慶は確かに長慶から偏諱を授かったと見られてますが、前名の貞虎は景虎からの偏諱と見られていて、小笠原家の系譜でも上洛前に上杉家を頼ったことになってるようですし、小笠原父子を三好の手先みたいに捉えるのは、ちょっと視点偏りすぎじゃないのと思ってしまいました。
三好政権が足利将軍家の権威の相対化を進めたという点については異論はないんですが、あらゆる事柄を対立的に捉えて解釈されているのは、逆に説得力を失わせてる気がします。

ちょうど先日かんたんブログさんの紹介記事を読んだところですが
http://trillion-3934p.hatenablog.com/entry/2018/07/07/024720
僕も天野先生が提唱している久秀=三好宗家忠臣説だと、永禄の変後の行動の落差というか掌返しの早さがあり得ないんじゃないかと思っていて。まだ三分の一くらいしか読んでませんが、その疑問はこの本でも解消されなさそう?
永禄の変の御所巻説など個別の事件で触れられたことはありますが、もっと他の研究者、特に義輝~義昭期の幕府の動向に詳しい研究者の方々にも、三好家分裂期に踏み込んで来ていただきたいなぁと。
馬部隆弘先生は天野説へのカウンターとなる論考をちょくちょく発表されてるみたいですが、一般書はもとより論文集も未刊なので、バラバラに入手するしかないのがつらい。(たとえ論文集が出たとしても読む余裕ないですが)