「『お猿の駕籠屋』ってなんで駕籠なんか乗ってるんだろう。猿なんだから樹を飛び移ればいいのに」
「うーむ」
「それも『日暮れの山道 遠い道』だよ。駕籠に乗るより走ればいいのに」
「猿の皮を剥いでなめしてあるのかもな」
「え」
「そして願い事をすると恐ろしい目に遭う」
「猿夢」と「猿手」のセットみたいなやつか。
/今日のダンナ
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「『お猿の駕籠屋』ってなんで駕籠なんか乗ってるんだろう。猿なんだから樹を飛び移ればいいのに」
「うーむ」
「それも『日暮れの山道 遠い道』だよ。駕籠に乗るより走ればいいのに」
「猿の皮を剥いでなめしてあるのかもな」
「え」
「そして願い事をすると恐ろしい目に遭う」
「猿夢」と「猿手」のセットみたいなやつか。
今日知り合った方の話を楽しげにする妻。
「それでお友達になりたいなって思ったの」
「そうか。もしその人がはてこを悲しませたら俺は徹底的に復讐する」
「え」
「刃物で刺す」
「刺しても仕方がないんじゃない?」
「そうか。じゃあ階段から落とす」
「え」
過剰保護。
「ねえ、前のトラック『幸せを運びます』だって」
「強奪するか・・・。
『おい、停まれ。ここを開けろ』
『何をする、やめろ!』
『あ!これは!!』
さて、何が入っていたでしょう。心理テストです」
小芝居から問いかけへの変化が際立っていた。
不埒な犯罪に憤る妻。
「ああいうことする人、許せない。死ねばいいとって思っちゃうけど、」
「死ねばいい。死ね」
「でも死んでも仕方がないでしょう?もっと何か社会の役に立つようなことになってほしい」
「石鹸になる」
えっ
「では、痩せる秘訣を教えてあげます」
「うん」
「まず、一日中考え事をします」
「わかった、もういい。」
「もういいの?」
「どうしたら考えないで済むか、一日中考えて暮らしてるのに」
おお、報奨金制度を失った哀れな資格取得マニアよ。
生まれて初めて体脂肪率が26%を超え、肥満領域に入った。
「太る秘訣を教えてください」
「うん、いいよ。『もー甘い物喰わなきゃやってらんないな』って時に、あ、基本は一日中車移動ね。そういうときにハーゲンダッツのアイスを買って食べること」
だいぶ投資していた模様。
「わたしなんでこんなに身体固いんだろう」
「才能、才能」
そうか。
「ありがとうございました」
「いいってことよ」
「また、お越しください」
「ああ。気が向いたらな」
駐車場の機械によく横柄な態度を取っている。
このところすっごく出来のいいハイクに載せられない悪い冗談ばかり言っている。
運転しながら「クワイ河マーチ」の替え歌の替え歌を歌っている。
「サル それは チンパンジー
神 それは チンパンジー」
あ?
「ああ!そうか!」
「なに」
「サル それはチンパンジー アイ それはチンパンジー つまり神は愛だったんだ!」
チンパンジーじゃないんだ?
「ヨーグルトは全部食べてや、時計の針のキットがあろうが、あれを箱に仕込むったい。
外から見えるようにつける方法と、蓋を開けたとき見えるように仕込む方法と二種類あるな」
ブルガリの時計を作る方法。
「全米さんっていう人がいるんだな。邦画は、まず見せてもらえない」
泣いたり震撼したりしている映画界の重要人物、全米。
「今日シンナー使う仕事やってな」
「あらー、たいへんだったね」
「なるだけ吸わんようにしとったけど、コンビニでトイレ借りたら足がなんかむずむずするんよ」
「うん」
「それで『こりゃなんかの、シンナーで感覚おかしくなるっちゅーけど、それかの』って思っとったんやけど、おさまらんで、ズボンの上から足をパンパンと叩いたんよ」
「はぁ」
「そしたらこんっな大きな、ゴキブリがよ、裾から出てきてカサカサカサってどっかに消えて行った」
「ひいいいいいいいいっ!」
「あはははははは!」
「なにそれなにそれ」
「はぁでもわしゃしあわせじゃの。家に帰ったら話せる家族がおるもんな。
一人やったら帰って黙って思い出してそれだけやもんな。こうして笑ってもらうこともないしな」
ハイクに書けるネタも一人分だもんな。
「そんで『さぶ、戻ってきてくれ』ってなるんだよ」
「なにそれ。違う話じゃないの」
「え、そういうんじゃなかったっけ?さぶがさあ、全部の罪をかぶって・・・」
「いや、捕まってる間通ってきてくれたって話でしょ」
「そうだったっけ?あの話書いたの誰だったっけな。宮本武蔵じゃなくって」
「山本周五郎だよ」
今夜われわれは珍しくビール部活動にいそしんでいます。
「はてこが実は他の人と深い仲になってたらどうする?」
「はてこさんには悪いが、そのときはそっと、はてこさんの前から姿を消すよ」
「再構築しないの?」
「しない」
「でもそしたらもちおは若い奥さんと結婚して子供もってしあわせになるかもしれないね」
「それはない」
「なんで」
「もちおは海へ行くから」
「えー」
「ブクブクブク」
もちおにこの覚悟があるからこそ、うちは親族で唯一未だ離婚に至っていないのだと思う。
職場に困った若者がいる。
「今度『おまえキンタマついてるのか』って言ってやろうと思って」
「『セクハラだ!』って言われるよ。『ジェンダーの押し付けだ!』って訴えられるよ」
「っ!じぇんだーーーーーいあーーうぃおーうぇーらーびずゅーううー」
危機感0。
二泊三日旅に出ていた妻と寝入りばなのもちお。
「離れてもちおを思い出すと『いつかこうして会えなくなる日が』って思って泣けてくる」
「そうか・・・」
「写真とか動画とか見てもそこにいないんだと思うと・・・」
「そうだな・・・」
「風になるのか」
「・・・風になると思ったらアマゾンの奥地で食べられて4人の腹に収まって残りは河に・・・」
「え」
「風になれなかった・・・甘く見てたんだよな、アマゾンを・・・俺は写真家で・・オーストラリアのテレビ番組だったんだ」
「ちょっと」
「この現代にまさかそんなことがって・・・その番組は俺が行方不明になったあとなかったことにされた」
「ねえ、なに言ってるの」
「ごめん、もちおちょっとイタコになってた」
怖いので、離れて寝た。
お墓問題について。
「最終的には土に帰りたいな」
「日本の法律じゃ土葬は許されないから千の風になるしかない」
「え」
「80%くらいは燃えて灰になって火葬場の煙突から出てく。もっとかな?
残った骨拾ってこんなに軽くなって・・ってほとんど残ってないからな」
「あの」
「『そこに私はいません』って言いたくなるよな。風に乗って~雨になって~ふりそそいでいます~」
あの歌比喩じゃなかったんか。
顔写真入りのプロフィール広告を見ている。
「この人のこと馬鹿にしてるでしょ」
「してないよ?」
「なんでニヤニヤしてるの」
「少しゴリラに似てるかなとは思った」
「ちょっと」
「『クリスチーネ剛田です』って名乗ったらブホッてなるかもしれない」
無垢な天使のような笑顔で言う。