法事を終えた午後のひととき、妻の実家で大酒飲みの舅、義弟と語らいながら、ビールワイン日本酒ウィスキー焼酎など飲み続け、夕方からソファーで死んだように眠り、夜は寒い寒いとガタガタ震えつつトイレに通い、義妹に甲斐甲斐しく湯タンポやら水やらカイロやら面倒を見てもらっていた。
「すぐ潰れるかわいい奴を演出したんだ」
最愛の奥様はそう思っていらっしゃらなかったみたいで、鬼気迫る般若顔だった。
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今日のダンナのことを語る
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「見て、あそこにクリスマスの残骸が」
「逃げ遅れたんだな」
「え」
「トナカイは行ってしまった」
E.T. か。
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「しじゅうはってっていうんだよ?」
「うん、まあそれの中に二つ巴っていうのがあるんだって。ろくじゅうきゅうってあるでしょ、あの体勢」
ろくじゅうきゅう…?
「数字の話だから」(半切れ)
「はい」
「で、『二つ巴がろくじゅうきゅうだったら、一つ巴は一人で自分のをくわえるのかな』って思ったけど、言わなかった」
「それはゼロだな」
「!」
「インド人がゼロを発明した。ヨガから」
「ゼロを脱してよんじゅうはちが始まるんだな」「家でこうして喋ってる方が楽しいわ」
本当はこんなに面白い人なのに。
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接待で中洲のお姉さんのお店へ行ってきた。
「場を盛り上げようとした女の子が下ネタを始めてさ、よんじゅうはちってってあるじゃん?」
それじゃ将棋の対戦解説みたいじゃないか。
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「今日のお弁当、どうだった?」
「味があった」
素人陶芸作品への感想か。
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最近妻がちょいちょい飲み屋向きなんじゃないかと言われる件について。
「ぜんぜん向いてない。何もわかってないな」
「そうよね、お酒飲めないし煙草もダメだし」
「飲み屋は決まった時間に毎日店を開けなきゃいけないんだ」
そうね、そこね。
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「もちおが大変なときに仕事入れて家事ちゃんとしてなくてごめん」
「いいんだ。これではてこが一発当てれば俺は遊んで暮らせる」
「そんなこと考えてるの?」
「そう。俺は将来を見据えて足元をおろそかにしているんだよ」
だめじゃねえか。
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半月前・・・高いところから飛び降りて鞭打ち
昨日・・・腰をいわして痛み止めコルセット中
痛がりながらどこか得意気なニヤニヤがミサワ風でイラつく。
食事抜き睡眠抜きにもこういう顔をする。
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「Hey Hateko don't make it bad. 生きてるだけで 丸儲け by Sanma」
落ち込む妻に”Hey jude”のメロディーで。
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大きな買い物をして不安定になっている妻。
「いちまんごせんえんぶんも化粧品買っちゃった」
「いちまんごせんえんぶんもか」
「いまのファンデーションカバー力0だし、マスカラは落ちて目の周りにつくし、夕方お客さんの前にいるとき気になるんだよね。仕事の日だけしか化粧しないからまず一年は持つと思う。そしたら一年間もう悩まなくていいと思ったの。でも、今日の売り上げより多い出費だよ。どうかしてたかな」
「どうかしてたな」
「はぁ・・・仕事の役に立つと思うと財布の紐が緩んじゃう。いけないなあ」
「そうか・・・」
「あ、ところで、amazonから何か届いてたよ」
「あ!忘れてた。わーい!」
「『アオイホノオ』DVD・・・いくらしたの?」
「いちまんごせんえん」
「え?」
「いちまんごせんえん」
いま見たら19000円+税だった。もちおの人生は明るい。
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さる人が姑にご執心だと妻から聞いて。
「よし、あいつにお義母さんの老後を見てもらおう。
二人を掛けあわせて、あれ?掛け合わせるじゃなくて、なんて言うんだっけ・・・『引き合わせる』か」
あなた、露骨すぎるわ。
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今年もまた、次世代団地猫が近隣をちょこまかするシーズンがやってまいりました。
「あ、猫だ」
「もちお、猫飼いたい?」
「うーん」
「でも猫がいると抜け毛が落ちたり壁を引っかいたりするね」
「そう。猫がいると家がめちゃめちゃになる」
「うん」
「なんてすてきなんだ」
すごく飼いたい模様。
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最近よくトイレの電気がつきっぱなしになっているが
「トイレの電気がつきっぱなしになっているのは妻のしわざだ」
と主張している。
先日ついにもちおが出てきた後の現場を押さえた。
「もちお!トイレ電気ついてるよ!もちお消してないじゃん!」
「うん、今回はそうだね」
でもあなた前世は点灯夫でしょう。
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「ゲ ゲ ゲゲゲのゲ
夜は墓場で運動会
飲みすぎた ここどこだ 墓石冷ーたいー
記憶もなんにもない
あ、記憶も財布もない、の方がいいな」
おい、鬼太郎。
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「ドブネーズミ みたいに わきの下が くーせえ
写真 には うつらない この臭さ たまーらーねーえー」
風呂上りの歌。
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[家族との会話を晒す]
はてこの従弟が結婚して、生まれた長女にミミコ(仮名)と名づけた。
従弟はその後離婚して再婚し、生まれた長女にココミ(仮名)と名づけた。
「いつか二人が出会ったとき、姉妹だと気づいてほしいかから」
という理由だった。新妻、よく許したな。
数年後、ココミに妹が生まれ、今度はミコミ(仮名)と名づけた。
そして一昨日、ミコミに弟が生まれた。
ミミコ、ココミ、ミコミと来て、あとなんだ。もうないよね?
「コミコがある」
「ああ!」
「3文字で3bitだからな。文字数制限がなければミミミとコココもいける。
『こんな名前をつけるのは親父に違いない』ってなる」
「ミミコの次をヨンコにすればよかったのにね」
「それならゴコ、ロッコとどこまでもいけるな」
ミミコの前にあと二人いたのかもな。
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大舅が亡くなった。妻がしゅんとしている。
「おじいちゃまの80%くらいは千の風になる?」
「ああ、なるとも」
「そしたら風になって雨になって降り注ぐ?」
「降り注ぐとも」
「そしたら爪の垢煎じて飲むような効果がある?」
「ああ、ある。灰から吸収するから吸収率がいい」
「そしたら世界は今日ちょっといいところになるね」
「ああ、なる」
犬の灰が枯れ木に花を咲かせるくらいだからな。
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通夜、葬儀、初七日と二日で3回衣装チェンジした坊さんが
袈裟の下にボーダーTシャツを着ていた件について
「そうよ わ た し は よこしまな僧侶」
と歌っていた。
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「そ(ん)げんシティ福岡…尊厳市福岡」
という選挙チラシが届いた。
「尊厳って行ったら最近連想することはひとつだろ。ティーで楽になるんだ」
「不謹慎だよ!」
「ハハハ!」
「いけないよ!」
「ハハハハハ!」
もちおもいけないけど、立候補者も少し考えろよ。
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「おじいさんみたいなまともな人が、はてこさんの親戚に一人でもいてよかった」
祖父は一族の良心であった。
/今日のダンナ