大衆との間に立って権力者と対峙する役割を期待されてきたのがキャスターだが、久米宏、筑紫哲也らが画面を去って以降、日本のテレビは顔を失ったままだ。いまこの政治家をあの人ならなんと評するだろうかーー。そんな風に思える独立独歩のキャスターはほとんどいなくなった。
自らの意見を示すことがない特徴をもって米国の政治学者エリス・クラウスがかつて世界でも特異な存在だと指摘したNHKは、ますます組織統制を強めてもいる。
記者やディレクターが本を出版する際、「リスク担当」の原稿確認者が、校了後の原稿をチェックするよう昨年7月、局内ルールが変わっ…[全文を見る]
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大自然にわが身をさらけ出し、人間の可能性を問う人もいる。探検家・ノンフィクション作家の角幡唯介(36)は新年をカナダ北極圏で迎えた。太陽が出ない極夜の星々を六分儀で測って位置を割り出し、約530キロの徒歩単独行に挑んでいる。全地球測位システム(GPS)や衛星携帯電話はあえて持たない。
出発直前に旅の狙いを問うと、角幡はこう答えた。
「自然が持つ本来の凶暴性を体感し、どうやって身体を自然に深く潜り込ませるか。携帯やGPSはそれを阻害する要因になる。当然怖くて不安だが、一方で旅の喜びも増すと思う。」
便利すぎる日常への疑念が、昔ながらの探検へ駆り立てる。「創意工夫する過程と時間が消失してしまったら、人間は一体どこに存在すればいいのだろう」
朝日新聞朝刊. 2013.1.9. p.32. 希望は5 ローテク. メルロポンティの思想を手がかりに.
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数年間寝たきりという不便な身体条件を知覚の深化に転じ、芸術活動へと昇華させたのは明治時代の正岡子規だ。「写生」を説き、俳句や短歌、散文の革新を進めた。
思想家・文化人類学者の中沢新一(62)は、かつて子規の言う「客観」を「過激なコンセプト」「心とモノがひとつになって流通流動しあっている存在の次元」と評した。
「健康に動くことと日常言語をしゃべること。この二つで人間は周りの自然から受ける情報の大半を無意識に捨象してしまう。動けないまま凝視を続けることで、子規は小さな庭が豊饒な自然に満ちていると気づいた。言葉を最小限に切り詰めて…[全文を見る]
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廃校を借り、「共育学舎」と名付けているのは三枝孝之(65)だ。10年以上、若者に気が済むまで無料で寝泊まりできる場を提供してきた。「若い人が迷ったり悩んだりしたとき、『止まり木』のような場所を作りたかった」
三枝は約10年間「孤立」を選んだ経験を持つ。高度経済成長期の20代。東京などで会社員生活を送るうち、「何のために生きているのか」という問いが膨らんできた。
40代を迎え、静岡の山間の集落に小屋を建て、ガスも水道も使わぬ自給自足に近い生活に。外部の情報と自分の内側から生まれた「答え」を混同したくなかった。「ただ生きている」という…[全文を見る]
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「職場の女性が3割を超えると、組織が変わる」という実感が海老原(嗣生:括弧内引用者)にはある。米国の経営学者にも同様の研究がある。「ただそのためには何よりも男がもっと育児や家事をするのが大前提。働け、子どもも産め、家事もしろ、と何でも女子に期待することにまずは反省を」と言う。働くついでに男社会の企業風土も変えて、というのは男の手前勝手な〈希望〉だ。
堀江敦子は中学時代から100人以上のベビーシッターをしてきた。キャリア女性の家庭も多かった。「母親1人で育児をしてはいけない」と確信するようになった。子育てを社会でシェアすればみなが幸せにな…[全文を見る]
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《大人は自分勝手だと文句をいうだけでなく「今の大人ができなかったこと」を考えることが、私たちにとって大切だ》
今の大人ができなかったことって、何だろう。
社会学者の宮台真司さんの言葉がヒントになります。
「日本は、引き受けて考える社会でなく、任せて文句を言う社会」
(中略)
「お任せ」は、もう限界みたい。そこから脱するために、まず社会保障がどうやって成り立つのか、考えてみる。
(中略)
お任せをやめ、自分たちに引きつけて、よく考え、話し合うしか道はない。自分が「こうしたい」と思っても、相手のことを考えて譲ったり…。
人の話を聞いて、黙々と行動する人も欠かせない。
(中略)
みんなに「出番」がある。腕まくりして取り組み、話し合うなかから、「問題解決」が色々な場所で起こってくる。
朝日新聞朝刊. 2013.1.3. p.8.社説. 高校生の皆さんへ.
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その浮いた足のままで生きていくとは、想像していなかった。おとなになれば、なにかになれると思っていた。神さま、たくさんいて、人気もなくて、なんにもならなかった霊長類のヒトは、どんな動物といっしょに住めばいいのでしょうか。
石田千. 平日. 文芸春秋. 2012.3. p.104. (文春文庫)
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尊敬する哲学者、梅原猛に「猿之助(現・猿翁)が太陽なら君は月だね」と言われたという。「月は、満ち欠けて人の心を狂わすっていうじゃないですか。月と言われて、なるほど、いいなあと思いました」
夢は、すべてにおいて自分の考えが入った新作歌舞伎の創造とか。「でもそれには10億円ぐらいかかるかな」とニヤリと笑った。
産経新聞. 2013.1.1. p.49 興行ガイド. 市川猿之助 新時代の歌舞伎 創りたい.
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【日本人にとっての神について】
古代日本の神道というのは後世のような理屈や装飾などはなく、神のしずまる場所(にわ)に入れば魂振り(たまふり)を感ずるというだけのすずやかなものであった。
産経新聞. 2013.1.1.p.5. 司馬作品で読む日本史. 黎明・古代編.
=全集48『街道をゆく 竹内街道』(文芸春秋)
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他者に期待するな。他者を動かそうとするな。都合のいい他者を求めるな。他者を理想化するな。他者に憎悪をぶつけるな。他者はどこまでも他者であり、私はどこまでも私でしかないという限界を受け容れよ。他者に距離を取り、自分からも距離を取れ。最終的には自分すら他者の一部であることを知れ。我々は自分自身でさえ思い通りに操れない生き物なのだ。我々にとってもっとも未知なる他者は自分なのかも知れないのだ。
中村うさぎ. さすらいの女王. no.715. 週刊文春 1月3日・10日新年特大号 p.105
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崖っぷちまで行った者だけが飛べる
数年前、母からこの言葉を聞いた時はドキッとした。それまで専業主婦として平穏な人生を過ごしてきたとばかり思っていた母が、人生の黄昏を迎えてそんなことを考えていたとは。崖っぷちまで行く覚悟がなければ、そこにとどまるしかないのだと。いったい母にどんな体験があったのか。それとも平穏な人生などただの幻想にすぎないということか。
朝日新聞朝刊. 2012.12.21. p.8 高橋書店 第16回手帳大賞 黛まどか賞 森西志保子さん
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【おこあえ】
菊 90年代がイヤなのは、全員マナーが良くなって、みんな友達になって、突出した人もいないし見苦しい人もいなくて、みんな鬱病になっていく時代じゃないですか。誰か生贄として無粋な役をやってと言っても誰も手を挙げないから自然発生に頼るしかない。で、最近デパートとか料理屋とかいろんなところに発生してきたと思うんですよ。それはいいことで、ああいう人がいるから粋な上客が遊ぶというマナーが光り輝くというコントラストが戻ってくると思うんですよね。隣を見たらすごく下劣で下品なヤツがいて、こっちは上手に遊んでいるヤツがいるというダイナミ…[全文を見る]
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【おこあえ】
湯 …開高健のサントリーが培ってきた洋酒文化みたいなものは男から女にシフトしつつあると思う。男は昔から色事をこういったハードな酒の力を借りてやっていたじゃない?今はというと、男は色事を全部降りちゃっているから、オンナ食わずに、草原で草を食べているからね(笑)
菊 『スタジオ・ボイス』でこれだけは言っておきたいことがあって、草食系男子というのは、最近やたらマリファナで捕まっている大学生のことだと思いますよ(笑)
一同 (爆笑)
STUDIOVOICE vol.401 May. 菊地成孔×湯山玲子:時事放談. INFASパブリケーションズ 2009.5. p.19.
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とても可愛い、いとしいと思っていても、それがあまりにも強いと自分でも怖くなって、これはもしかして憎しみなんじゃないかという気がしてくるの。こんなにもいとしいと思わせること自体が罪なんじゃないかと思えてくる。あまりに誰かを愛しすぎるととても苦しくなるから、その相手が、自分をひどい目に遭わせているんじゃないかって思うのね。すると、その人にも自分が愛しているのか憎んでいるのか分からなくなってしまう。人間にはそういう瞬間があるのよって。
yomyom vol.23. 青葉闇迷路/化身. 恩田陸. 2011.12.26. p.511-512.
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道楽本位に作られた文章や作品が好きだ。売れない純文学作家は好き勝手なことばかり書いているが大衆小説家である自分は読者に奉仕しているのだ、といった意味のことを熱っぽくツイートなさる作家がいる。それは慶賀の至りだがその力説自体は読者に奉仕しない、というかお嫌いな純文学、とくにむかしの私小説はだしの「こんな自分をわかってほしい」という絶叫そのものであることにお気づきか。
自己満足したくて書かれた小説のなかにはダメなものもあれば私が楽しめるものもある。他方、道楽じゃありません奉仕の心で書きましたという触れ込みの小説はもうその力瘤だけでお腹いっぱいで絶対に楽しめない。小説家はもっと道楽で書いてくれ。
yomyom vol.23 (特集:道楽のススメ BOOKGUIDE) 千野帽子. 道楽を書く。道楽で書く。 p.161
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人には、ふとそう感じたと言っていますが、「ふと」そうなるのは、毎日を暮らしているうち、己の内に、こまかな要素がいくつも、ドロドロに複雑に絡み合った過程を経ての結果なのです。そういう結果であることを己は知っています。知っているが、他人に説明するのが…というより自分で自分を分析するのが面倒なので、だから、ふと、とか、あるとき急にとか、便利な一語を使うに過ぎない。
姫野カオルコ. パパ、あたし、東京へ行く. yomyom vol.22 p.203
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ある日ある時、自分が重大な秘密を抱えていると気付いたら、人はどうするべきなのだろう。しかも、それが個人的な秘密のみならず、もっと大きな、多くの人々に関わる秘密だった場合は?
そんなことを考えながら、私はぶらぶらと一人、賑わう人々の流れから逃れるようにして喧騒を離れた。
辺りが静かになるとホッとする。孤独だ、孤独は嫌だと自分を哀れんでみても、やはり独りでいるのが性に合っているのだ。
子供の頃は、「秘密」という言葉が大好きだった。本の題名に「ひみつ」という言葉が入っているだけで反射的に手を伸ばし、表紙を飽きもせず眺めては空想…[全文を見る]
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生きることが死ぬことよりいっそう困難な場合は、あえて生きることが真の勇気である。(トマス・ブラウン)
これは、武士道が繰り返し教えていることとまったく同じ。
(新渡戸稲造『武士道』)
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【求めても得られないなら】
求めても手に入らなかったのか。だとしても、あきらめてはいけない。もっと求めよ。獲得できるまでしつこく求めよ。
それでもなお得られなかったのか。だったら、もう求めるな。その代わり、見つけるようにせよ。見出すようにせよ。
いつしか必ず、求めていたものよりずっとすぐれているものを見出すことができる。
(超訳ニーチェの言葉Ⅱ)
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【人は変われる】
いつのまにか自分自身を、形の決まった固い石のように思うのはよくない。自分という個性がすでに出来上がっていて、あとは外側に多少の変化があるくらいだと思うならば本当にそうなってしまう。
どんな歳になろうとも、人間は限りなく変わることができる。まるで粘土のようにいくらでも望みの自分をつくっていくことができる。
自分自身が望むなら、そうなりたいという意志を持つのならば、自分はいかようにも変貌し、より高みに昇っていくことができるのだ。
(超訳ニーチェの言葉Ⅱ)
/勝手に引用