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 手許にいちばん数多くあるのはエールフランス便に乗ったときの、機内食のカトラリーセット。フォーク、ナイフ、スプーンとどれも短か目で安っぽいものなのだが、プラスティックの柄の部分は、白地にフレンチブルーの流線のストライプ。きゃー、可愛いー、と食べ終わった途端にナプキンで拭いてジャケットのポケットにしまい込んだ。
 エコノミークラスに乗ってはこんなことを繰り返し、いまでは半ダースぐらいは揃っている。ところがビジネスクラスで旅するようになると、これががっかり。普通のつまらない銀の食器。そしてエコノミークラスも9.11以来プラスティックのち…[全文を見る]

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 アメリカの大学生は、日本のオシャレな学生たちの憧れとは裏腹にまったく着るものに無頓着に見える。そのノンシャランスさが、たまらなくカッコよかった。学生たちの無頓着な佇まいが、漱石の作品の中の高等遊民たちを思い出させるのだ。
 桜の花の嵐の下で、男たちは酒を酌み交わす。あるいは夜のカフェでコーヒーを飲みながら、延々と議論を繰り返す。
 このような無為な時間は若い一時期にしか持つことが出来ない、ということに、ひとはずっと年老いてから気付く。実はこの無為な時間こそ、とても貴重な宝物だったのだ。
___小西康陽「ステンカラーのコートについて」

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子どもの頃、夢はサラリーマンと書いて、「少年よ、大志を抱け」と先生に指導された。大志とは何か。ふと、そのことを思い出し「大志の抱き方」とインターネットで検索してみた。何も見つからなかった。
(大島尚悟)

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すべての良いものは、ゆっくりと時間をかけてつくられる。急いでいるときこそ、ゆっくりやらなくてはならない。

__「レール・デヴァガール」(リスボン)オーナーの一人、ジョゼ・ピニョ (「世界で最も美しい書店」 清水玲奈 より)

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「僕はエロ本編集者だったから、そういうAVの子とか風俗嬢とか仕事でのつきあいがあるでしょ。すると、よくわかるんだけど、みんな頑張ってるんですよ。あの子たちは決して自分はこうだってことは言わないし、実はヘンな男にひっかかったりもしてるけど、頑張って生きてる。そりゃ生まれ育った条件は、父親がどうとか家庭が複雑とかいろいろあるけど、少なくともそういうところに“落ちてきた”なんて感覚はないわけですよ。なのに、AVに出てダメになった女の子たちを私はこんなに温かく見守ってるんですよ、みたいな調子で書いている記事がやっぱり少なくない。なんだあ、こ…[全文を見る]

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 いまこの国の人たちの中には、「身も蓋もない言い方をするならば、『みんなで無知でいようぜ、楽だから』というメッセージ」が蔓延しつつある、と想田さんはいう。「彼らにとって、政治家のレベルが低いことは好ましいことであり、むしろそのことを、無意識のレベルで熱望しているのです」

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欠けた部分がある人は、幸運なんです。欠けている分、ほかの部分がとんがっているから。
当たり前の生活をしてきた普通の人って、常識に縛られて、なかなかとんがれないでしょ。
障碍はアイデンティティです。

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 あなたは、体外受精を3度試みても、うまくいきません。職場の事情や金銭面の障害があるけれども、2人目の子どもを産み、5歳の子の弟か妹を作ってやりたいと、悩んでいます。
 有名な割にあまり知られていないアンデルセンの「コウノトリ」という童話があります。
(中略)
 コウノトリが赤ちゃんを連れてくる話は、「子どもはどうして産まれるの?」と聞かれたときによく使われますが、同時にそこには、子どもが「偶然の授かり物」であることも含まれています。
 あなたには、体外受精以外に手段がないため、弟や妹を作ってやれなくて申し訳ないという気持ちがどこかであ…[全文を見る]

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 翌日の昼になると、高橋の幻覚はすっかり醒めたようだ。ホテルのガーデンレストランで食事をしていても、別に変わった様子もなかった。山崎が「美味かったな」と高橋に話しかけると、高橋は「うん」と答え、それから次のように言った。
「でも、40×16の燕尾服にも困ったよ」
 まだ醒めてはいなかったのである。

―――宮沢章夫「マッシュルームと燕尾服」 (「彼岸からの言葉」所収)

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  父親の没義道(もぎどう)さとか、農村の暗さとか、社会の不合理とかではない。それへの怒りはむろんのことにしてもそのいやな感じはもっと根本のところに係わっていて、その根本の事実がいかにも理不尽であった。人はこのようにして死なねばならぬことがある。この事実はまだ少年といってよかった私には震撼的だった。少年の直覚は、こんなことはあってよいはずがない、許されてよいはずがないと叫んでいた。
 「小さきものの死」 渡辺京二

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 ある晩、不思議な声を聞く。最初、女性の笑い声のように聞こえたが、泣き声だった。奇妙な泣き方だった。
 声の主は、天草地方の農村から母親と一緒に療養所に運ばれてきた娘。2人とも既に極度に衰弱していたが、付き添って来た父親はすぐに去ってしまう。夜になって母の容体が悪化し、娘が泣き始めた。明け方までに2人とも亡くなった。

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国内総生産(GDP)が中国に抜かれたといっても、世界3位である。一人当たりGDPでは、中国よりも8倍以上高い上、世界でも上位20位以内に入っている。人口が5千万人を超えるような国で一人当たりGDPが日本ほど高い国は数少ない。しかし、これだけ所得が高いのに、私たちは豊かさを実感しない。「それなら、もう少し所得が減っても豊かさを実感できるような暮らし方をすべきではないか」と考えるのは自然だ。実際、私たちが幸福を感じるのは、所得からだけではない。豊かな人間関係をもっていることや健康であるということも幸福であるための重要なポイントである。その意味では、少し所得が下がっても、人間関係や健康状態をよくすることで、私たちはより幸福に生きていける。

――「豊かなのに苦しい」わけは 大竹文雄

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必死にもがき、薄れる意識の中、木材につかまり黒い海の上に出て、辺りが静まり返った中、母を何度も何度も呼び続けました。わたしは近くの建物まで泳ぎ、今こうしてこの壇上に立っています。
(デジタル版から)

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ぼくが文章を書くときは、確信犯の部分で書くから、みんながひっかきまわされた。そこまでぼくを分析できる批評家がいなかったんで、みんなどっかに引きずられて、どちらかといえば、ぼくが確信犯として映画を組織していくために書いた文章、あるいはぼくのリードに、みんながひっかかっちゃったところはあるでしょうね。これはぼく、あるいはぼくの作品を支持しようとした人もひっかかったし、それに反発した人もひっかかった、ということはいえるだろうと思うな。そういうことに関してきちんと書いてくれる批評家はいなかったから、どうしてもぼくが、ミスリードであるということはわかりながら、ミスリードをしなければならなかったという側面がある
『大島渚 1960』

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 ある日突然スーツを着た人たちが高級車でやってきて、夢物語のような復興計画をたくさん話したことがありました。「これさえ実行できればすべてがよくなる。前よりももっと豊かになる。雇用も生まれて苦しい思いをしなくてすむ。あなたを助けたい」と言って豪華なお弁当を配った。……私たちが望む望まないにかかわらず、ここの住人ではない推進者の周到な計画にすべてを急がされたのはすごく悔しいことでした。 
――志賀理江子ほか『螺旋海岸 notebook』

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 高原さんは、片づけを「日常生活に支障をきたすほど散らかったとき、そのストレスを減らす方法」と定義する。「他人は散らかっているように見えても、住んでいる人がストレスを感じないのなら、その家は『片づいている』のです」

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…自分にとっての自明性の世界に気づくことで、それには「異質なもの」を経験することである。広い意味でのカルチャーショックの効用で、自分と違う多様な生き方、考え方、人生経験をしてきた人との出会いである。そうした社会的な場と機会の創出に真剣に取り組む必要がある。
 人生後半期におけるまなぶことの意味はこの点にある。そして、これは最高に贅沢なことかもしれないのだ。

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何のために学ぶのかを考えたとき、これまでは自分のためと思ってきたが、自分自身に知識がないことは人を傷つけることだと知った。
人を傷つけないために、そこにある痛みを知らなければならない。そのために学びたい。

都内高校卒業式にて、卒業生代表

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今思えば震災について本気で考えたことがありません。いつもどこかに綺麗事をまじえて考えていたような気がします。
私は大好きな母を忘れそうになっています。
震災が起きる朝に交わした言葉も、声も顔も動作も、思い出せないことが多くなっています。それがとても怖いです。
そして忘れていってしまう自分が嫌でしょうがありません。
(中略)(進路説明会の時のこと)
けれど、みんな親がきて隣に座る。それを見た瞬間、少しだけ泣いてしまいました。
母に会いたい気持ちが溢れてきます。
母は死んでしまったけれど、まだ生きている、いつか会えると信じます。
その気持ちが私にとって前に進むための理由になります。これから大切な仲間とともにたくさんのことを体験し、心に残る思い出にしていきたいです。そして、母に会ったら自慢して、一緒に笑い合いたいです。

宮城県東松島市立鳴瀬第二中学校卒業生 高橋まなきさん

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私はあの日より、少しだけ強くなりました。母への想いと残された家族や友人、多くの方々の支えがあったからです。親孝行もできませんでしたが、自分らしく生きることが恩返しだと思っています。

政府追悼式 被災3県 遺族代表のことば(抜粋) 避難中に一緒に津波にのまれ、母ゆかりさん(当時42)を亡くした岩手県代表、山根りんさん(18)