- ---『夢のように、おりてくるもの』 第三部「視界樹の枝先を揺らす」10-----
いま海外のホテルの一室でこれをかいている。実をいえば毎晩少しずつ書き溜めてきた。あの日いつもの倍の荷物をみた瞬間、嫌な予感に血の気が引いた。あいつは何食わぬ顔で搭乗チケットとパスポートをさしだした。高いところは死んでも嫌だと言っておいたはずだと囁いたが無駄だった。あたしのために命くらい賭けてよと微笑まれた。そうまでせがまれて昨夜あれだけ睦み合ったあとに尻尾を巻いて逃げ出せるはずもない。
はじめて海外公演を観た。海を背にした野外劇場に直線裁ちの…[全文を見る]
/花うさぎ