- ---『夢のように、おりてくるもの』 第三部「夢の花綵(はなづな)」夢うつつ夢うつつ 31-----
スタンディングオベーションの観客のなか、俺は席を立った。隣りの弟子はあわてて俺の袖を掴んだが、俺はその手にそっと触れて頭をふった。苦労して扉の外に出ると弟子が走って出てきた。
「先生、どうしてっ」
「どうしてもこうしてもない。彼女がそばにいたのに気付いただろう。邪魔になる」
「でもっ、でも……っ」
泣いていた。この子は怒っているときに泣く。俺は、その肩に手をやってそっと抱き寄せて囁いた。
「本当にどうもありがとう。手をひいて連れてきてく…[全文を見る]
/花うさぎ