『江戸役者異聞』 山本昌代(著) 河出文庫
十年単位の積み本消化。
鏡の中の己の姿にしか興味を持てぬ三代沢村田之助が、人気の絶頂で脱疽に犯され四肢を失い、一人に戻るまで。
……これ、よしながふみが好きな人は絶対好きだと思う。読み終わってから頭の中で反芻してたら、よしながふみの絵とコマ割りで浮かんできた。
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『始まりの場所』 アーシュラ・K・ル・グィン(著) 小尾芙佐(訳) 早川書房
わたしにしては一気読みに近いスピードで読んでしまった。以前はほんとル・グィン苦手だったのだが。
途中で、「あ、これはピーター・ジャクスンの『ブレインデッド』だ」と思った。
始まりの場所は、いつかは出て行かねばならない場所なんだ。
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『残酷な童話』 チャールズ・ボウモント(著)
いろんな種類の短編が載ってるんだけど、わたしはちょっとブラック・ジョーク気味のが好きだった。
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『マンディアルグ短篇集 黒い美術館』 生田耕作(訳) 白水社
図書館で背表紙と目があってなんの予備知識もなく借りたらば、なかなかのフランス的エログロ小説であった。
短篇五つの内、ラスト三つが本来の短篇集『黒い美術館』に収録されていたもので、前二つは日本で独自に訳者が選んだものらしい。……すみません、ラスト三つがいっそうエログロでおもしろかったです。江戸川乱歩と『家畜人ヤプー』の間くらいのレベルかしらー。
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『とうに夜半を過ぎて』 レイ・ブラッドベリ(著) 小笠原豊樹(訳) 河出文庫
すごく好きな話と胸くそ悪くなる話と、両方が入ってた短編集。非ヘテロに関する話もあり。
ラストの短編、あれが締めで、すごくおだやかな気持ちになった。
ブラッドベリは若々しいな。
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MURDER ON THE LINKS by AGATHA CHRISTIE
『ゴルフ場殺人事件』、これの映像化作品はスーシェ版と、翻案ものの『赤富士鷹 わが愛しのサンドリヨン』(副題がちょっと記憶あやふや、伊東四朗と塚本高史がコンビのやつ)の二つを見たのだけど、
後者の方が原作に沿ってよくできてた気がする。
ヘイスティングスは、いいやつだねえ。そんで、ポワロさんはほんとに仲人好きね。探偵の次に天職なんでは。
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『砂の本』 ボルヘス(著) 篠田一士(訳)
集英社文庫
そんな能力は自分にはないとわかっていながら、何かを書きたい気持ちにさせられた。しかし絶対に、彼のような的確な表現も選択も誰にもできやしないだろう(どこの国でもフランスかぶれは「おフランス」扱いされるんだなとその一行の描写だけで理解させられ思わずにやりとしてしまうような)。
また、昔読んだ『マインズ・アイ』やチェスタトンを思い出したりも。
無限=1、みたいなテーマが好きだ。
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『アシェンデン』 サマセット・モーム(著) 河野一郎(訳) ちくま文庫
非凡な作家の、スパイとしての平凡な日常とは。しかし英国のスパイ任用の基準みたいなものはおもしろいなあ。
モームは一面的な人間を描かないね。すごいステロタイプに描き始め、そこから少しずつ個人を削り出してくる。あらすじだけ言えばステロタイプなよくある話になってしまうけれど、読むとと登場人物それぞれを確固とした個人として感じる。
一部を映画化したヒッチコック『間諜最後の日』も見たい。
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『エレンディラ』G・ガルシア=マルケス(著) 鼓直・木村榮一(訳) ちくま文庫
大人のための残酷な童話、6つの短編と1つの中編。
アニメ『カフカ 田舎医者』みたいな形で見たり聞いたりしたくなった。デフォルメされた線画と語りで。
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The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring, Insider's Guide
冒頭にピーター・ジャクソンと原作との出会いがどんなだったかが書かれてて、そこが象徴的ですごくよかった。
旅のおともに本は必須、旅はどこからでも、いつからでも始まる。
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『四人の申し分なき重罪人』G・K・チェスタトン(著) 西崎憲(訳) 国書刊行会
意外なことに推理小説であると同時にりっぱなロマンス小説集だった。まさかチェスタトンでロマンス小説になるとは思ってなかったんで、ちょっとびっくり。
ブラウン親父と同じ、無邪気さゆえにシンプルなままネガポジ反転させる瞬間、が読んでてなんとも快感でした。
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DEATH IN THE CLOUDS by Agatha Christie
手に取ったペーパーバックの表紙がネタバレしすぎてるんで、犯人はもうほんとに最初の方でわかってしまったのだった。このシリーズの装丁好きなんだが、今回はやりすぎ(^^;) それでも楽しみましたが。
以前、「ポワロが新しい趣味(仲人)を開拓する話」って、どれかの感想に書いたけど、いやいやいや、彼は昔っからそうだったっけか、と苦笑してしまった。クリスティはロマンスに過ぎるとこあるよな(苦笑)
あと、「女は愛するよりも愛される方が幸せである」「男は愛されるよりも幸せにできる方が幸せである」ってメッセージが強い。このへんがクリスティの強みで弱みだろうなあ。
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『女の一生』モーパッサン(著) 永田千奈(訳) 光文社古典新訳文庫
訳題の解説だけは、最初に読んでおけばよかったと思った。映画のタイトルに時々使われる『生きる』とか、あるいは訳者が挙げている『(ある)いのち』だとわたしの読み方が変わっていたかも知れない。
わたしには、主人公ジャンヌよりも、リゾン叔母の生き方、一生の方が気になった。また、後半のジャンヌのようすのリアルさは、読んでいてつらかった。
本当に死んでしまうまで、命が尽きてしまうまで、何が起こるのかは誰にもわからない。夭逝したモーパッサンにも、この物語の後がどうなるのかはわからなかったんではないか、40代後半以降の人生を、想像できなかったんではないか、そんな気がした。
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『薄気味わるい話(バベルの図書館13)』 L・ブロワ(著) 田辺保(訳) 国書刊行会
すべて現実にあったできごとを素材としてかかれたもの、とのことであり、すべての短編に献呈がつけられている。
これらの作品が週一回でも、新聞のかたすみに掲載されているとしたら、その新聞をやめられなくなる人はいるだろう。
ブロワなら、「今」をどう書いたろう、そう思わされる作品集。
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『お菓子と麦酒』サマセット・モーム(著) 厨川圭子(訳) 角川文庫
同郷で少年時代からつきあいのあった作家の伝記への協力を依頼された語り手(やはり作家)が、現在と過去を行きつ戻りつしながら、今は亡き老作家とその最初の妻との鮮やかな思い出と秘密を、そっと読者にだけ打ち明ける、そういう物語。
過去の鮮やかさと現在の嘘くささ、最初の妻と次の妻との対比(再婚した妻はまるで『春にして君を離れ』のヒロインのようだ)、作家の作家としての業や生き方、などが、ユーモラスに語りおろされてる。
わたしとしては、竹宮惠子でマンガでも読んでみたい。ウィリーやロウジー、ドリッフィールドのような人物やこの物語自体の雰囲気は、彼女の得意とするものの一つだろう。ところどころコマ割りまで見えるくらいに感じた。
とてもおもしろかった。買いたい本。
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DESTINATION UNKNOWN by AGATHA CHRISTIE
スパイ小説なのだけど、最終章の直前の段落に思わず「新井素子の『くますけといっしょに』か、とつぶやいてしまった。
でもこれがクリスティーなんだよねえ。
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『夢の丘』アーサー・マッケン(著) 平井呈一(訳) 創元推理文庫
田舎の少々はっきりものをいう牧師の息子として生まれ、孤独もあって幻視者としての素質を育て、文学に身を投じた青年の心理小説。
気づくと彼の幻視に取り込まれ、現実と幻の境のない世界を、手を引かれ見せつけられる、その恐ろしさ。まして文学を志す者には恐怖そのものではないかと想像する。
最後が、途中でわかった。それまでも、追体験させられた。
「読んだら狂気に陥る本」の一つに入れていいと思う。
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『あの薔薇を見てよ ボウエン・ミステリー短編集』エリザベス・ボウエン(著) 太田良子(訳) ミネルヴァ書房
おそらく、著者の書く「少女」は、あまりにも「少女」なので、好き嫌いがまっぷたつに分かれるだろう。わたしは苦手。
しかし「少女そのもの」を中心に据えたものではない作品は、絶品と感じるものが多かった。
他の作品を読み続けたいかと問われると、とても迷うかも。わたしにとって、波の大きな作品集。
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THE SHPHERD by FREDERICK FORSYTH
クリスマス・イブにあるパイロットに起きた奇跡を書いた短編で、筋はすぐにわかってしまうのだけど、読み終わった時、ほっとさせられた。
イラストが全体の半分以上かと思うのだけど、それがほとんど夜空と飛行機。カラーで見たくなるイラストばかりだった。
フォーサイスってこういう話を書く人なのか。
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『モーム短篇選(上)』行方昭夫(訳)岩波文庫
これ舞台で見たいなーと思うものがいくつかあった。解説や略年表から見ると、かなり戯曲も書いてるとのことでやはり、と。
モームが書いた頃のイギリス人のイギリス女性に対する一般的な見方というのが自分でつかめてないかもなーとも感じた。かなりの女性嫌いを感じたのだけど、イギリスの小説にはけっこうあるからなあ。
お話自体は「見たい」ものが多かったです。
/読了