『大震災'95』小松左京(著) 河出書房新社
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『燃えつきた人間』グレアム・グリーン(著) 田中西二郎(訳) 早川書房
・原題はA Burnt-out case。症状が出尽くし失いうるものをすべて失った状態となってから完治する症例。この小説では、その肉体的典型のただなかに身を置いた精神的典型者の回復を追う、……というまとめかたでは、あまりに無残な気もする。
・成功し称賛された過去は、簡単にスティグマになる。物語化の罪なる面。
・グリーンの描く女性には限界があるよなあやっぱり。この小説では特に目立つかも。クリスティも時々こういう女性を描くが。無邪気の恐ろしさ。
・信仰、半信仰、無信仰。わたしはトマ神父やライケルにはなりたくない。まだ自覚あるステープルトンのほうがましだ。
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『ジュネーブのドクター・フィッシャー あるいは爆弾パーティ』 グレアム・グリーン(著) 宇野利泰(訳) 早川書房
ほぼ一気読み。比較的短い小説とはいえ。そしてとても毒のあるわらいと残酷に満ちた小説。さすが英国カトリック作家。毒々しいMPが好きなら超オススメ。
この本で初めて、グリーンからジョナサン・キャロルを連想した。似てると思う。とても。キャロルの父親は『第三の男』に関わってたっけか?『死者の書』手元にないから解説の確認ができない。しかしキャロル自身がグリーン好きなことはまちがいなかろう。たぶん。
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Death Comes As The End by Agatha Christie
古代エジプトを舞台にした連続殺人事件。読み始めてすぐに山岸凉子の短編を思い出してしまい、全編彼女の絵で脳内再生されてしまった。まあまちがってはいまい。というか、それ読みたい。
クリスティの中では、推理小説よりもメロドラマに分類してもいい気もする。
というか、クリスティ連続読みしてると、性描写ぬきのハーレクィン読んでるみたいなもんなんかなという気もしてきた。
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『イタリア民話集(上)』カルヴィーノ(著) 岩波文庫(4003270916)
『疑うということ』ルチャーノ・デ・クレシェンツォ(著) 谷口勇/ジェバンニ・ピアッザ(訳) 而立書房(4880592021)
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『恐怖省』グレアム・グリーン(著) 野崎孝(訳) 早川書房
こった構成の4部仕立て。欠落によって不幸にある人間がさらなる欠落によって幸福になり、ばらばらに散らばった欠落を徐々に取り戻していくことによって、不幸も幸福も秘密も嘘も常に抱える、愛と恐怖の両方を知る人間になる話。
最後まで読んで『フラワー・オブ・ライフ』思い出したわ。
スパイ小説の一つとは思うのだけど、この人の書くスパイはどれも、孤独で完結していて、厳しい守秘義務ゆえに本当の私生活は持てない存在。この主人公もその意味で、グリーンの主人公らしいと思う。彼自身はスパイじゃないけれど。
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『黒い蜘蛛』ゴットヘルフ(作) 山崎章甫(訳) 岩波文庫
挿絵がかなり入った、民話を元にした教訓小説なのだけど、その教訓的な部分が鼻につくわけではなく、物語としてほんとにおもしろかった。
クオリティ高いアニメで見たい。黒い蜘蛛や緑の男、動いてるのが見たい。
でもこどもにはトラウマになるかもな。
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The Thirteen Problems by Agatha Chistie
『鏡は〜』読んだ直後にこれ読むと、時の流れを感じるなあ。あれはミス・マープルのシリーズの中でも特別な小説なんだって今さらわかった。オールキャストっていうか。
ミス・マープルって海外にもよく行く人だけれども、基本的には小さな社会でおなじみの友人に囲まれて暮らしてる人なのよねえ。そしておっしゃるとおり、human natureは、いつでもどこでもさほど変わりはしない。
サー・ヘンリーやドリーは出てくるのに、ヘイドック先生本人の出番がないのが残念だった。
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『最後の言葉』グレアム・グリーン(著) 前川祐一(訳) 早川書房
グリーン本人選の最後の短編集。まだ短編読んだことがなかったので新鮮。
近未来SFっぽいものもあれば、スパイ小説も星新一が書きそうなのからウッドハウス本人の体験を思い出させるものもあり、渋い心理推理も。映像で見たいものから映像無理でしょ、ってものまで、さすが幅広いわー。
切れ味鋭いクールな短編。でもわたしは長編のほうが好きかも。珍しく。
うん、珍しく。
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『永遠の夫』ドストエフスキー(著) 千種堅(訳) 新潮文庫
ドストエフスキーにしては気楽に読めるものかも。なんとなく、舞台とか映像で見たい感じ。トルソーツキーは醜悪で哀れかもしれないけど、ほんとはヴェリチャーニノフのほうが身勝手なエゴイストにも見える。
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『グレアム・グリーン全集25 ヒューマン・ファクター』
第二次大戦時、諜報機関に勤めていたグリーンの直接の上司がキム・フィルビーだったそうで、彼をモデルにしているのでは、と言われているスパイ小説。
見事なタヌキとキツネのばかしあい、誰がプレイヤーで誰が駒なのか、情報戦と言う名の派手さのまったくない孤独なゲーム。
イデオロギーとは無関係の裏切り。個人にとっての故郷とは、土地か、繋がりか、それは選びとれるものであるはずなのに。
グリーンにはずれなし。
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『負けた者がみな貰う』グレアム・グリーン(著) 丸谷才一(訳) ハヤカワepi文庫
会社の大株主の気まぐれで、二度目の結婚式をカンヌであげなければならなくなった、バツイチ・40代・経理の平社員の「ぼく」。そして、カンヌといえば、カジノ。賭事など興味がなかったのに、自分の見出した必勝法「システム」にのめりこみ始め……
経理って、確かイギリスではまったく冒険心も遊び心もない人の代名詞だったはず。グリーンはそういう人がいきなり何かにかっさらわれちゃう話を描く人だなあと思う。これもそういうお話。2/3くらいまでは気分悪くなるんだけど、そっから先がすてきだった。
二回映画化されてるらしいのだけど、どちらも見たことない。なんか、「御老体」は今だったらモーガン・フリードマンとかがやりそう。
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『貧しき人々』ドストエフスキー(著) 木村浩(訳) 新潮文庫
ゴーゴリ『外套』のパロディともいわれる、ドストエフスキー処女作。カバー裏の解説文に「〜の不幸な恋の物語」とあるんで一瞬あれっと思ったが、考えてみると、ドストエフスキーは恋物語でないもののほうが少なかったりもするか?
『外套』を薦められての反応、すごいリアル。彼女が本当にそういうつもりでそうしたのかはわからないのに、そう考えて脊髄反射してしまうあたり。
お金がないと、見える範囲が狭くなるよね。空間的にも、時間的にも、思考的にも。
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『からくりがたり』 西澤保彦
半年一作くらいのわりで全8作の短編連作。
久しぶりに読んだ西澤保彦……はじけてるなあ(^^;) あまり気軽に誰にでも勧められるような小説家ではなくなってしまったかしら。基本は推理小説で、全体の構造でも仕掛けを作ってあるのですけど、それより各キャラクターの妄念とかエロ描写につい目を惹かれてしまう、どっかずれてるわたくしでした。
これも人物表作りながら読むほうがいいかも。
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The Sittaford Mystery by Agatha Christie
確かに映像化されてるのを見た覚えがある(設定と犯人とトリックを覚えてた)んだけど、ポワロもミス・マープルも出てこない話。物語からいくとやっぱり改変してマープル・シリーズのドラマに入ってるんかしら。
これは読んでて途中で混乱しそうになったんで、人物表作りながら読んだほうがよかったかもしんない。
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『本の森の狩人』筒井康隆(著)
積読消化、お風呂の友。
新聞連載の書評を一冊にまとめたもの。取り上げられてる本、見事に一冊も読んでなかった。わたしの読書量はそんなもんです。
なんか積んでない未来の積読本が増えた気はした。
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『内なる私 グレアム・グリーン選集1』 瀬尾裕(訳) 早川書房
主人公は、自分の言動のひとつひとつを批評する「内なる私」に悩まされる。「それ」は何を基準にわたしを批評するのか。いつ、何を基盤にして彼の中に築かれたのか。
彼は追われる。何が彼を追いかけるのか。
死人を活け戻すのは誰なのか。現実の死だけでは、死人は死なず、生き続ける。
グリーン本人が認めるように若書きのメロドラマだけれど、それでも読んでよかったと思う。
鮮やかなラストだった。あいかわらず。
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『叔母との旅 グレアム・グリーン全集22』 小倉多加志(訳) 早川書房
主人公は50過ぎの平凡で自己満足した引退生活に入った男、彼は母親の葬式で、50数年ぶりに叔母と再会する。彼女はエキセントリックかつチャーミングな女性で、次々に彼が知らなかった事実や人々の話をする。ちょっとした旅行に誘われた主人公は、二、三日の観光旅行と思い承諾する。彼はまったく知らなかったのだ、叔母が生粋の旅人であることを。
イギリスの小説で叔母と甥となるとだいたい一筋縄ではいかないものだろうとは予測していたけども、これは読んでてとっても楽しかったし、人間的だった…[全文を見る]
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『父 パードレ・パドローネ ある羊飼いの教育』 ガヴィーノ・レッダ(著) 竹山博英(訳) 朝日選書
以前ぱさんてさんに紹介いただいた、サルデーニャ島の生活について触れられてる本。著者の自伝・独立編、というところだろうか。
おもしろかった、と同時に、しんどくもあった。タイトルからもわかるとおり家夫長を自認する父親と、長男である著者との相克を書いたものなので。もしかしたらフラッシュバック起こす人もいるんじゃないかと思われるほどの「教育」が描かれている。
後に弟が起こした「反乱」とそれへの著者の反応を考えると、長男がいかにたわめられて育てあげられるものかがよくわかる。そしてその影響から抜け出ることは、本人が理解していてさえも、難しいことなのだろう。著者の後の生活を知り、なんだか哀しくなった。
そのうち、これを原作としたという映画のほうも見たい。
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『ジュニア・ブラウンの惑星』 V.ハミルトン(作) 掛川恭子(訳) 岩波書店
積ん読消化。昔赤木かん子のYA向け読書ガイドブックで感想を見てから気になって、買っておいたもの。
内容については、ストリート・チルドレンの話、くらいしか覚えてなくて、ただ、「バディーのように支えることを覚えそちらに回ってしまった子はもう助けられないのかも」云々というのが、印象に残ってる。なぜか『BANANA FISH』のアッシュを思い出したのだ。
でも、わたしは、このラストで、彼も救われたのだと信じられた。バディーはいうなれば美しくないアッシュで、それゆえの幸運もあったのだけど、彼がこういうふうに救われる話だってあるんだと思うとすごく嬉しかった。
かなりかなーりおすすめです。これは自分の本なので、読みたい人には貸せますよ。
/読了