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連続はてな小説のことを語る

庭に目をやると、割り箸を十字に結んだ真新しい墓標が小さな土山に刺さっている
あの越前蟹の墓だ
あの日、三郎は最後の一台のスタイリーを奪うように買い、越前蟹の亡がらをおまけとしてもらってきたのだった
「それなのに、何故、また蟹が?」

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そうしている間にスタイリー(商品)はどんどん売れ、おまけの越前蟹も次々と木箱を去ってゆく
ついに最後の一台に買い手が付くと、新春大バーゲンのハッピの男が申し訳なさそうな笑みを浮かべて、三郎の腕の中の越前蟹に手を伸ばした

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猫は木箱に手をかけ伸び上がり、三郎の頬を伝う涙をなめた
それが三郎の悲しみをいっそうかき立て、三郎はおうおうと声をあげて泣いた
スタイリーは静かにお湯を沸かしていた

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「なんて美しいオッドアイだ」

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「なんだい?貧弱な坊や」
きらりと歯を光らせて、こんがりと日焼けをした男が答えた
スタイリーをしながら
説明しよう
本来、スターリーはプールサイドに長椅子のような形状をした運動器具に横になり、「スタイリースタイリー」と口ずさみながら、ぎったんばっこんするものであるが、その男は直立した状態で背部にスタイリーを密着させ、直立した状態で軽やかにぎったんばっこんしつつ、三郎に声をかけたのだ
たくましい腕で越前が似の脚を掴みながら

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スタイリーの後に年季の入った木箱が見えた
中に大鋸屑に塗れた越前蟹の姿があった
微かに左鋏を震わせて、越前蟹は三郎を見つめた

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φ(・ェ・o) 。o0( …えーっと、会長が登場っと… )
φ( ゜д゜) 。o0( …え!?…英語!?… )

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三郎がシャワーを済ませる頃には、撤収作業は全て終わっていた。先ほどまで辺りに立ちこめていた練乳と苺の甘い香りは消え去り、地下闘技場にはカビ臭いコンクリートと湿った土の匂いが戻っていた。

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もしやもしや…もしやもしや…
いかん!これでは「岸壁の母」ではないか。

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いや…まさか…しかし、やはり…

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狭いロビーに設けられた物販コーナーには、レスラーグッズの他に西家表札ストラップや、氏神さまのお札やお守り、穫れたて野菜や手作りジャム(嘘偽りなく手作り)が並んでいる。新春公演のポスターを見るともなく眺めながら、三郎は淡々とチケットをもぎっていた。

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それでも卵は産まれ、雛は育ち、裏庭には二羽のニワトリの原則にはじき出されたニワトリが路上に溢れた。村人が頭を抱えるようになった頃、峠の外れにぽつんと一軒の牧場が現れた。
KFC契約牧場。手書きの表札のかかる柵の向こうに、ニワトリたちは吸い込まれるように消えてゆく。

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セカンドライフを農村で!
山村留学で元気はつらつ!
マクロビオティック&ヨガで美しく!

過疎化に悩んでいるのは、この村も同じである。
万策尽きて、最後にすがったのが闇プロレスなのであった。
効果はまだ確認できていないが、とりあえずブロッコリー畑を闊歩するニワトリの数は増えたようである。

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庚申の日に夜通し行われる興業は、代々この村の名主の分家筋の西家が音頭を取っていた。

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満開の桜はその重さで枝をしならせている。まるで熟した果実のようだ。遠慮がちにしたくしゃみにも、桜はぷるぷるとその花弁を震わせて、ぽたりと肩に落ちてきた。
朝までもてば、また誰かに見上げられ、愛でられたであろうに。
一合升の酒に桜を浮かべ、詫びるつもりで一息に飲み干した。

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ちなみに、その観光農園の焼き印は篆書で「雪苺娘」と書いてあるらしい。右隅に小さくヤマザキ製パンとも。

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一合升には焼き印が押してある。古代の漢字、或いは象形文字のようだが判読ができない。

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前述の通り降雪のため峠の往来は途絶しているが、世の中にさして障りもない。

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店内は節電モードとはいえ、ひんやり気持ちがいい。入り口すぐの青果コーナーには、ところ狭しと…ところ狭しと…。
「すいか、メロン、桃、さくらんぼ…しまった!すでに季節は夏か!!」

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そして15分後、ほくほくと湯気を立てる固ゆで卵を前に、練乳を握りして涙する三郎がいた。