隣とその隣はたぶん高校生の男女連れなんだが、二人とも睡眠をとりつつもあのなんとかいう五本の指を絡めあうおててのつなぎかたをしている。
そんでそのふたりの手のみずみずしいこと。してみると我が手は指毛が明瞭であるしいささかくたびれていると言われても反論できんな。
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電車内にてのことを語る
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隣とその隣に座っているおっちゃんは、おそらく会社の同僚か、取引先関係者で、会社関係者が亡くなった葬儀の帰りだろうかという身なりだ。もうひとりいた姉さんと3人で、故人の話はさておき、つとめて明るくしようとしていたのだろう、月曜日のランチがどうこうという話題で盛り上がっていたが、ときおりおっちゃんの一人から「故人も喜ぶと思いますよ」といったせりふが聞かれた。
姉さんが先に降りると、残されたおっちゃん二人はすぐに静かになり、居眠りをはじめた。疲れているんだなあ。
おっちゃんの一人も降りてしまい、残されたおっちゃんは居眠りを続けているが、それとは別に、私が乗ったときからずっと、外国籍であろうおっちゃん2名が、おそらくお国のことばで賑やかにしゃべり続けている。
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しばらくぶりにかたむき姉さん目撃。
きょうは初見の兄さんの肩にしっかり頭を預けていらっしゃるので、これまで見たようなふらつきはない。
いつも降りる駅まで動く気配がないのでやや心配したが、駅で停車すると、すくと立ち上がり降りていった。
頭を預けられていた兄さんとは何のやりとりもなかった。このテキストを書いている今もまだ、兄さんは同じ席に座っている。やはり他人だったようだ。
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反対側はシートの端で壁になっているので、そっちに傾いてくれればいいんだが、こっちに傾いてしまうおっちゃん対策に、おっちゃんの肘の下におれの鞄を潜り込ませる作戦が的中だ。
おっちゃんのボデーがおれに直接触れることはなくなったぞ。ときどき鞄が重くなるが。
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隣に座ったおっちゃんは、白髪あたまで白いポロシャツ、色褪せたジーンズをはいている。
アルコール度数9%と書かれた缶入り飲料を開封してちびちび飲みながら、週刊ポストを広げて、藤圭子がどうとかいう記事を読んでいる。
日没前の黄色い陽光が射し込むが、建物の陰に入ると、蛍光灯の白い光が車内を照らす。
晩夏の夕刻である。
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左の席は高速貧乏ゆすり(前後左右)、右の席はゆったり船こぎ(左右)だ
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目の前でつり革を持って立っている兄ちゃんはきっと世間の評価だと洒落た人物ということになろう
イヤフォーンで音楽を聴いているようだが、不快な音もれもなく、よいではないか
あえて注文をつけるなら、花柄をあしらったすてきなズボンのズィッパーをきちんと閉じるとますますよい
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対面左の兄さんがシートに浅く座り、膝に鞄を乗せ、そこに肘をついてゲーム機で遊んでいる。その隣、わたしの正面の姉さんが、兄さんの背中側のスペースに頭を埋めるように傾いている。仲のよろしいことで、と思ったら、姉さんは左右に船を漕いでいる。いちおう傾くのは不本意らしく、身をあずけるつもりは無いようだ。あっ、先日私が身をよじって交わしまくった姉さんじゃあないか。別の日に見たときもよく傾いていた。お勤めなのかどうかわからんけどごくろうさまですがもしほかで眠れるならそうしたほうが疲れがとれるんじゃあないか。
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拝島から立川まで走る走る俺たち(うそ、一人で歩いた)は、流れる汗もそのままに(うそ、流れてはいない)、マイホームへと続く南武線に乗り込んだら、小わっぱがあまりにも堂々とシートの真ん中に座っているのでつめてもらった。汗っぽくてすみませんすみませんすみません
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左隣の姐さんのが眠ってこちらに傾いてくるレヴェルが高い。右は空席なんだがその隣のおっちゃんのポジショニングが半端なので空席に座ろうとする人がいないので、わたくしはそのスペースを使って姐さんの傾きを交わし続ける。
おっちゃん降りたので従来の空きスペースに移動。
乗客よ、姐さんの傾きを受け止める覚悟があるなら、わたくしの空けたスペースに座りたまえ。
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空いた車内でシートに着席。寝不足を感じる昨今、終点の乗換駅に着く前に、私は意識を失った。
やや急なブレーキがかけられたのだろう、私の上半身が進行方向に振られ、側頭部が隣の人にぶつかり、髪の毛がよじれるざらりとした感触で覚醒。「すみません」と謝罪のことばが口をつく。
謝罪した相手は、シートの端の壁でした。
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電話の中のほうが面白いんだが実際は「電車の中です」と言ったんです変換ミスですAERAとの距離と左右から見つめられるおっちゃんが興味深かったんですえーんえーん
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隣のおっちゃんはAERAを顔から15cmくらいに近づけて、半ば顔を隠すようにして読んでいる。
そのおっちゃんの電話に着信があり、振動する。おっちゃんはすばやく電話に出る。注視するおれ。おっとおっちゃんの反対のおっちゃんも注視している。
おっちゃんはAERAを口もとに密着させ、「いま電話の中です」と言って電話を切った。
AERAとおっちゃんの距離は再び15cmに戻った。
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久しぶりに涼しいと感じる朝。
席が空いたと喜び勇んで座ったら、前の人の温もりが背中に厳しい
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高校生くらいの男女連れが、1.5席におさまったガラガラの電車が到着したが、乗車する客が多く、経過を観察できるポジションから外れたのが悔やまれる
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当方スタンディング。目の前の席に座った兄ちゃんが口を大きく開けて壁面に頭をもたれてスイミング。
奥歯までよく見える歯科医の視界。
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当方着席中。つり革持って立っている目の前のおっさんの左大腿部、かろうじて股間と呼ぶのを躊躇うような位置に蚊が止まっているのに気づいてそろそろ3駅
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本日は晴天なり。
同じくよく晴れた春の朝に富士山がよく見えた地点にさしかかったが、富士山見えず。湿度高くて見通しきかなくなっているのでしょうな。
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おそらくヤングジャンプかモーニングを読んでいる初老と言えそうな年恰好のおっさん。隣の席の、おそらく制服であろう半袖半ズボン、首から水筒をぶら下げ、白い帽子をかぶった小学生が、正面からおよそ45度顔の向きを変え、おっさんが読み進める雑誌を覗いている。
おっさんは小学生に気づいているのかどうか、ゆっくりページをめくるが、ときどき船をこぎ、手が止まる。
二駅ほどそれが続いたが、ついにおっさんが雑誌を鞄に収納する。ちょうどそのとき私とおっさんの間に人が立ち、おっさんの様子が見えなくなるが、小学生の様子は見える。続きが気になるのだろうか、や…[全文を見る]
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着席率6割ほど。
向かいの空席の後ろの窓に窓に、A4の白い紙におそらく横書きで何かがびっしり印字され、印字面を内側に二つ折りされたものが放置されている。
しかし空席の隣は埋まっており、いまの席から移動して何が書かれているか確かめるのはいかにも不審に見えるだろうという危惧がいまのおれをつくったのであろうことよ。
/電車内にて