/電車内にて

隣のおっちゃんが膝の上で文庫本を広げたまま居眠りしているんだが、その1行目は「んで意識不明になって、また回復して、プーチン(親指で隠れている)っている。」というもの。
おっちゃんの意識戻るかな。

口から日本経済新聞が覗いたおしゃれかばんを膝に抱えたねえさんは居眠りして主に左に揺れて読書中の兄さんに繰り返しぶつかる

車掌のいう「そのへんでドア閉めます」とはどのへんですか

ホームに落ちる雨音が強烈だ

浴衣でU296袋提げて着席した姐さんが画用紙に描かれた人面魚の絵をはさみで切り抜いている
ええと刃物なんだが危険に思えないのは人を見た目で判断しているからか

前の人の電話機の上辺に13種類のアイコンが敷き詰められている

この混雑状況で対角10インチの板を取り出すやつの領空認識が興味深い

湾曲面に貼られたジョージ・クルーニーの顔のポスターにより、面長な白髪頭の人物がそこに現れ、ジェレミー・クラークソンを想起する

かつての勤務先で、専務の次に偉かった人は、「からっと」「爽やか」の対極にましましたなあと思い出すわたくしの目の前には「乗務員室」の文字

自分の電話機に夢中で周りに寄りかかっても気にしない連中にニューゼネレーション(というには年くった輩が多いが)のスキンシップを見た

病人救護の影響で10分ほど遅れたかなり混雑した車内に響く車掌の声は静かにしかしはっきりと苛立っていて、僅かなエンターテインメントを提供してくれる

明快な音漏れ断続の発信源を辿ってみると、イヤフォーンのコードに結び目を設けたビヅネスパーソンであった

[たぶんコントラバスとたぶん身長190cm体重120kgのアングロサクソはンはどちらが場所をとっているか]

きょうも満員電車の中、スタンディングぽりぽり音を立てておかき食いおっさんあり。これでこそ南武線だ。

小奇麗な身なりの小学生女児5名ほどが満員電車でスタンディングポテトチップ食い。ここ南武線にあっては驚くべき事態ではないというかこいつらがあの手のおっさん予備軍なのだろう

ブラインドが下ろされた運転席の後ろに立っているんだが、運転席からおじいちゃんっぽい声で会話のような独り言が聞こえる

カレーの香りが漂う

満員だが、押し合うほどではない。ロングシートの端に半透明な壁が取り付けてある車両。その壁に、シートをのぞきこむように身を預けて、おそらく立ったまま眠っている(いま膝から落ちそうになった)兄ちゃん。
のぞきこまれる格好になったおっちゃんはしかし手元の電話機でたぶんゲームに夢中だ。
その対比がなんだか水木しげる漫画で里にいる人間を山の上からのぞきこむでっかい妖怪のようだ。

1分も停車しない駅でおばちゃんが降りた。一呼吸置いて、スーツに革靴を着用した、推定身長185センチくらいのがっしり体型の兄ちゃんが、急に立ち上がって、身を屈めるような姿勢で車外に飛び出した。車両は空いているとはいえ、あぶねえなあと思ったら、先に出たおばちゃんに向かって「これ落としましたよ」と声をかけ、右手につかんだマフラーを差し出した。おばちゃんは「ありがとうございます」と例を言い、兄ちゃんは素早く席に戻った。

かなりの混雑だ。俺様に背を向けて立っているおっちゃんは、扉に向かって立っているんだが、おっちゃんのほうから、ぽりぽり小気味良いポップな音とともに、ショウユフルな香りがただよう。岩塚製菓と睨んだ(当て推量)。ここ南武線にあっては、微笑みを誘われる事態だ。