/電車内にて

中年バンドメンバー男(フードつきの上着袖折り返し、折り返し部分はチェッカーでかわいらしい、サングラス着用)が連れの女の肩に手を回したり、ドアに肘をついて拳は自分の口元に持ってくる哭きの竜姿勢をとったりしながらこんどのライヴの宣伝をしている。全10曲程度、前半後半で奏者入れ替え、男は後半担当らしいが、男が演奏する曲数が「4,5曲」から「8曲」まで振れる

目の前の網棚のメインフレームに、電車の進行方向(わたくしから見て右)を向いてキャメムスィが止まっている、と入力してふたたびそこに目をやるとキャメムスィはいなくなっていた、と入力してメインフレームに沿って視線を右にずらすと、キャメムスィが電車の進行方向に向かってすばやく歩いていた

アオスジアゲハが飛びよる

比較的余裕のある車内。向かいの席の兄ちゃんがラップトップでピースィー作業。何か落とした音に目を向けると、ワイアーレスのマウスと、そこから解放されて転がる電池と電池蓋。転がった先で会話に興じていた女子高生に拾ってもらっていた。

旧停止。車掌によると「前方の踏切で特殊な信号が点滅していますから確認します」とのこと。特殊!

満員電車の人波に翻弄されるゴーストバスターズキャップのボーイがSNSに「まじうぜ満員電車まじうぜ」と投稿

満員電車で押し合い吊革スタンディング兄ちゃんが必死の動画視聴。そのアイフォーンのデスプレイのひびがおりなす模様はこれまで見た中で最も複雑だ。

若夫婦風の男女が並んで座り、女が男の腕に顎を載せるようにして密着。なにやら休みの計画らしく、「ねえねえアクティビティの予約っていつまでできるの」など。アクティビティというのは文語ではなかったのか。あっ見つめあったと思ったら腕に腕かけた。

隣のおっちゃんが7インチ板状端末2台持ち

川崎始発に乗って着席。目の前のおっちゃんが片手吊革、片手ビッグコミック(無印)リーディング。ビッグコミックは黄金のラフ続編目当てで注意しているが、最新号はあんな表紙じゃったかいのう、と思ってよく見たら「2015.1.25」とある。半年前の漫画誌にしてはずいぶんきれいだった。

見動き取れないほどの車内で後方から継続的にひとりごと。「従わないやつはころす」「うん」「給料いい」「うん」「経理担当者」「うん」といった具合。
大勢乗降する駅で振り向くと、ひとりごとの主は「酒のほそ道」のコミックスを手に持っていた。

席が空いても誰も座ろうとしないのでわたくしが座った
右前方に立っている人の手提げ袋「ジンベエザメのミニどら焼き」の絵がかわいらしい

またもや(とはいえおそらくこれまでとは違う)画面割れアイフォーン野郎に隣接。野郎は電車が揺れても何らかの入力に必死だ。

ワイルドスピードについて話し合う高校生4人。うちひとりが「この映画、車必要あるの?」
あっ

向かいの席の推定高校生にいちゃん2名が遊びに行くのかこざっぱりしたパーカにデニムパンツなどウェアしていまどきキッヅらしい長い足を通路に投げ出しているんだが、全く同じカンヴァス地のスニーカーを履いている。

いつもと違う路線に乗ってシート前吊革スタンディング。前方から音が漏れてくると思ったら目の前の席のねえちゃんかやっぱり白いイヤフォーンだ。あっ、手元には画面にひびが入ったアイフォーンが!
と思っていたら右隣から電話機キャメラのシャッター音。このご時世に車内で撮影かと目をやると、隣に立った兄ちゃんは画面にひびが入ったアイフォーンを持っている!

これまでの私の南武線体験では、音が漏れているやつの9割は白いイヤフォーンを使っている。画面にひびが入っているやつの10割はアイフォーンだ。

たいへん混雑した車内で、来月から大学生になるらしいねえちゃん2名が春らしいいかにもおろしたての衣装でめかしこみ、キャンパスライフへの夢を語らっている。この状況下でリュックを抱えず背負っているのも初々しい。

武蔵中原(高架)−武蔵小杉(地上)間(踏切なし)の線路立ち入りによる遅延で大混雑車内でペットボトルの飲料を飲む兄ちゃんの肘があたって押されたゲームをやめないおばちゃんの7インチタブレットがわたくしに押し付けられて痛いインクレディブルゲーム(さすがに下車してから入力)

混雑車内で親しげにしかし心身ともにわずかな距離を保つ雰囲気てずっと話し続ける高校生男女
きみたちもうちょっと距離を詰めてくれないか